第43話 シンシアもやっぱり特別だよね

コオロギの魔物


食物連鎖の底辺にいるコオロギがなぜボスなんだ?と俺も不思議に思った。

実際、地下三階の雑魚は、ただ煩いだけだった。

攻撃もして来ない、ただただリンリン煩いのである。


そして地下三階は、迷宮というより草原である。

右も左もない、光をかざしても先が見えない、歩いても歩いてもどこにも付かない。

ただ周りの枯草からは、大音量のコオロギの輪唱が行われている。


ラミー

「私の耳がおかしくなるよ・・」


ラミー先輩とレミー先輩の耳は索敵も担っている、僕ら人間より数倍も聴覚が優れているからだ。


レミー

「なんか?いったか?聞こえないよ・・・」


レミー先輩に関しては、すでに会話もままならない

そしてそれは現れた・・・・

ラミーとレミーは頭を抱え蹲る。


ラミー

「あああ!何だ!頭が痛い・・・割れるように痛い・・」


レミー

「うう・・・誰か・・・この音を止めてくれ・・・」


カエデ

「何やら気配を感じます・・」


ミュイミュイ

「俺にはわからないな・・・」


ミュイミュイは夜目に優れているはずだが、何も見えないという・・・


ジュリ・ムュイ

「私たちも感じません・・・」


ジュリとムュイはリザードなので、温度変化を感じることができる、いわゆる赤外線探知だ。


イロハ

「私も感じます、闇の力ですね、なら私の出番です」


イロハは気を込め、あたり一面に闇の気配を張り巡らした。

すると、周りに人間大のコオロギが、僕らを囲んでいる。


コオロギたちは、一斉に羽を震わせ音を俺たちに向かい、音を発し始める。

すでに耳のいいラミーとレミーは、うずくまり戦線から離れた。


イロハ

「ち*っと*いで*ね、こ*は」


イロハが何か言っているようだが聞こえない

人間大のコオロギの内、何匹かが飛びかかってくる。

シンシアの最後の聖獣『3号』が一体を相手する


ユキナリも金棒を振るい、飛びかかるコオロギを攻撃する 。

コオロギの頭は鉄のように硬い、そこを攻撃してもあまり効果がなかった。


なによりこの大音量が俺たちの判断を鈍らせる、

イロハがさらに気を込めている、カエデはそれを守るように動いている。


俺も攻撃してくるコオロギで手一杯だ、シンシアはブーさん師匠と共にコオロギを相手している

ブーさん師匠はさすがに強い、迷宮にきて初めて戦ってくれている。

硬いコオロギの顔すらワンパンで粉砕する。


ジュリとムュイはラミーとレミーを守りながらみんなを支援している。


硬い顔の他に、強い顎の力、コオロギの顎の力でユキナリの盾は粉砕されてしまった。

そして、後ろ足のトゲトゲ、柔らかいおなかを攻撃すると、この後ろ足の攻撃が襲ってくる。

どこが、食物連鎖の底辺だ!・・・強い・・・


そのとき今まで煩かった空間が一気に静かになった


イロハがこの空間に静寂を作ったのだ・・・何か言っているが俺らの声すら聞こえない

しかし音さえなければ、コオロギは落ち着いて対処できる。


その静寂を切り裂く声が聞こえた


「ふふふ、闇を操る力の者がいるようだな、我は3回の守護、大エンマコオロギである。」


暗闇からその姿を現したコオロギは、大きさ5メートルはあろう巨大コオロギだった。

しかし、そのコオロギは地中にお尻から管を刺して動けないようだ。


メスのコオロギが、卵を産むやつ・・・卵管だなあれは

地中から、人間大の、コオロギが次々現れる。

周りのコオロギを、いくら相手にしても、きりがないってことか。


イロハも魔法攻撃を始める


ボスの声は聞こえたが、みんなの声は相変わらず聞こえない。

それどころか、今まで音を鳴らしていたコオロギたちも一斉に襲い掛かってきた。

ラミーとレミーも音の地獄から復活し戦闘を再開した、

ミュイミュイの髪の蛇たちは闇の野原に放たれコオロギの柔らかいお腹を噛み毒を送り込む。


シンシアもブーさん師匠に守られながら新たな召喚を行っている


ミュイミュイに合図した

あの大きいのを石化できるか?と身振り手振りで一生懸命伝えた


ミュイミュイは親指を立てた。

ミュイミュイの目が赤くなり大エンマコオロギを睨み付ける。


しかし人間大のコオロギたちが大エンマコオロギを守るように覆いかぶさり、石となった。


再びミュイミュイは気をため始めるが、明らかに疲弊している。


3階でやられる挑戦者が多いとは聞いていたが、これほどとは思わなかった・・・・

ミュイミュイの石化攻撃は、またも他の高コオロギによって防がれてしまった


そこでミュイミュイは魔力が枯渇し、倒れそうになる、すかさず俺はミュイミュイを支えた。

ジュリとムュイにミュイミュイの護衛を頼み、俺は戦線に復帰した。


イロハも、静寂の空間を維持しながらの攻撃に、疲弊の色が見え始める。

カエデも各方面の支援で手一杯のようだ。絶対数が多いコオロギを減らせれば・・・


そのとき!


パオーーーーン


シンシアが光の聖獣を召喚した!それは象であった、あまりに大きな召喚でシンシアも倒れてしまった

しかしその象は強かった・・・迫りくるコオロギをなぎ倒し、その鼻で足をもぎ取り、その牙で顔を刺す。


みるみるコオロギたちの数が減っていく。

イロハの静寂の空間が途切れた、イロハも限界だったようだ。

一斉にコオロギたちは再び羽を合わせ音の攻撃を繰り広げようとするが、すでに光の象によって、その陣形は崩れている


パオーン!ドスン!ドスン!パオーン


大エンマコオロギの護衛コオロギも象に向かう


そこを見逃す俺とユキナリではない!

今まで、盾を持っていたユキナリは、両手で金棒を振るう、当然威力も増す

俺は火の魔法を大エンマコオロギの根元から発生させた、大エンマコオロギは卵管を抜き、


卵管を剣のように俺らに振り払ってくる。

ここぞとばかりにブーさん師匠も俺らの攻撃に加わってくれた

ブーさん師匠はその卵管を蹴り折った。強すぎるよ師匠・・・・


さらにミュイミュイが放っていた、髪の蛇たちが数匹、大エンマコオロギの腹に噛みつき毒を流し込む

ミュイミュイは倒れながらも親指を立てていた


しかし弱りながらも、大エンマコオロギは、攻撃を仕掛けてくる。

ラミーとレミーが、その頭の上から大エンマコオロギの触角を剣で切り落とした。


その瞬間、音もなく大エンマコオロギは光へと消え、そこに宝箱を残した、そして下に降りる階段が現れた。


3階の宝箱からは闇の法衣という摩道防具、鋼の剣、鋼の槍が収納されていた。



ラミー

「闇の法衣か・・・水や火だと高値何だが・・でも30万グラスくらいでうれるか?」


カエデ

「この中ではイロハ様が適性がありますが・・・・イロハ様の法衣は、このレベルを超えているので、売ってしまっても問題ないかと」


ユキナリもうなづく


イロハがよろめきながら立ち上がった

「大丈夫です、わたくしの法衣はオワリの最高の技術の賜物です。」


シンシアはまだ眠っていた


光の象はシンシアを背中に乗せた

パオーン!と光の象とシンシアが光りだした・・・・

シンシアの顔の血色が蘇ってくる


レミー

「短期召喚にしては随分神聖な物が現れたな・・・」


ブーさん師匠がシンシアが書いた魔方陣を指さす


血痕?


ブーさん師匠がうなづく


「しかし、誰の?」


ブーさん師匠はシンシアを指さす・・・

シンシアは、自らの血で魔方陣を書いて、永久召喚をこの場で行ったようだ・・・

永久召喚を行うと魔力がこぞってなくなる・・・シンシア無茶しすぎだ


シンシア

「う!うーん 唐揚げ食べたい・・・」

シンシアが寝言を言っている、さっきまでの今にも死にそうな顔が、幸せそうな顔に代わっている



この世界において魔力は生命力である、生き物である限り魔力は存在する

魔力を元に使う魔法や召喚はいわば自分の生命力を使っているのである、だから使おうとする魔法が強大なほどそれは自分の生命力も減ってしまうのである


召喚術もそうで短期契約の召喚であればさほど生命力を使わない、しかし召喚するものの力が強いほど、使う生命力が強いほどに強い召喚獣が出てくる

ましてや永久召喚の場合は、魔力のこもった血が必要である、使う地に応じて現れる聖獣も変わってくる。


シンシアはここに来て、魔力が上がってきていたので、永久召喚を近々行うといっていたが、今やることはないと思う。


パオーン!パオーン

像の泣き声でシンシアは目覚める。


光の象はシンシアと何かしゃべっている

すると光の象は犬ぐらいに小さくなった。

シンシアは喜び抱き着く。


シンシア

「この子は今日からガーナちゃん女の子だって!」


レミー

「えっと短期召喚じゃないのか?」


シンシア

「うん!永久召喚に成功したよ!ガーナちゃん強かった?」


ラミー

「強いなんてもんじゃなかった、この像がいなかったら・・全滅していたかもしれない」


シンシア

「うーん、見たかったな・・私ガーナちゃん召喚したら気を失っちゃったから・・・」


神学で象の聖獣・・・ってなんか居たかな・・わからないな・・


「ガーナちゃんは神の世界ではなんて聖獣だったんだ?」


シンシア

「なんかガネーシャっていう名前だったみたいだよ、あまりかわいくないから、ここではガーナちゃん、それに大きさも換えれるって!」


ガーナちゃんはみるみる大きくなる


パオーン


シンシア

「すごいすごい!みんな乗るか?だって」


ミュイミュイ

「いいのか!」

ミュイミュイはワクワクしている


ミュイミュイを鼻で巻いて背中に持っていくガーナ


ミュイミュイ

「高いな~シンシアすげーなお前」


シンシア

「見直した?」


ミュイミュイ

「あの時もらった蛇も、さっき大きなコオロギを噛んで活躍してたぜ!俺の髪のエースになってる。」


シンシア

「ふーん!蛇もやるわね」


ガネーシャ・・・・聖獣じゃなくて神じゃないのか・・・守護自ら、命の危険のあるほどの血を使って、召喚したってことが影響しているのだろうか・・・


しかも先ほどの光・・魔力回復の光のようだった・・そんな力・・やはり神のガネーシャか聖獣ではなく神獣を召喚したってことか・・・・すごいなシンシア。


こう見えてシンシアは、やっぱり守護者の器何だな・・・


こうして地下三階もクリアした。

僕たちはガーナちゃんに乗り地下4階に行く・・・


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