先の花と後の花

春風月葉

先の花と後の花

 よく晴れた日の屋上、フェンスの外に立ち茜は言った。

「私もね、もうだめみたいなの。だからね、自殺しようと思うんだ。」

 どうしてそんなことを言うの。

 覗き込むと茜は泣きそうな顔をしていた。

「美咲さん、どうして居なくなってしまったの。」

 大丈夫、私は居なくなったりしないわ。

「あなたが、支えだったのに。」

 これからも私が支えるわ。

「どうして自殺なんか…」

 そう、自殺なんかしてはいけない。

 なぜか胸の辺りが少し痛んだ。

「すぐにそちらに逝きます。」

 違うわ茜、私はこっちよ。

 茜は死への一歩を強く踏み出した。

 あぁ、待ってと私は叫ぶ。

 屋上から茜の姿は消えた。

 見下ろすと地面には赤い花が咲いていた。

 醜い二輪の赤い花が…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先の花と後の花 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る