第11話 魔導書館 禁忌書物庫 『オマエモホンニナァレ』

 ジュノーと別れてから薄暗い道を歩くこと十数分、俺は目的の場所にたどり着いた。眼前に広がっていたのは首を限界まで上げて見上げなければ天辺が見えない程に大きな扉と、中央部に付けられたとても小さな鍵穴。

 そして、鍵穴から曼陀羅のように緻密に書き込まれた魔法陣であった。


「一番乗り‥じゃなさそうだ」


 視線の端に映る人影。見上げていた頭を下ろし、扉の下側に目を向けると、そこには薄い緑色の髪の毛を短く切り揃え、鋼のプレートを付けた幼い少年が扉の前で体育座りをして股に愛刀を挟んでいた。手に持った刀を抱きしめ心地よさそうに眠りこけている姿は何とも愛らしい小動物のようである。


「あの子がネイビー‥か?」


 寝ている彼を起こすことに少し気が引けた。しかし、本来の目的は彼を探すため。遠慮することはないと、俺は彼の前まで歩み寄り、肩に手を置いてゆすり起こす。幼い少年は、首をふらつかせながらも、うっすらと瞼を開けて目を覚ます。


「誰‥?」


 こんな所に一人でいるのは、さぞ心細かっただろう。そう思った俺は頼もしさを見せようと、少しばかり胸を張って答えた。


「やぁ、少年。無事かい?」


 薄ら目の少年は、天井の光とぼやけた視界で満足に見えないであろう俺の姿を確かめもせず、ため息を吐いて頭を伏せた。


「‥‥夢か、グゥ‥」

「いや、寝るなよ‥おい‥おいって‥‥こいつ、本当に寝やがった‥」


 目の前の少年からは気持ち良さそうな寝息が再び聞こえ始める。

 謎の悔しさを感じた俺はさっきよりもやや強めに、脳を揺らすつもりで、彼を起こす。すると、今度はぱっちりと両目を見開き、口元を歪めて些か不機嫌な態度で口を開く。


「ここまで来れるのは彼女達だけ。男の人が来るなら夢としか‥」


 彼はずっと誰かを待っているようである。女性と限定しているあたり、十中八九彼女達のことだろう。しかしながら、目の前の少年は、その彼女達が命懸けでここへ来ることを理解しているのか分からない。まるで、自分は絶対に見限られないと確信したかのような謎の自信が妙に癪に障る。そのせいか、言葉遣いが若干荒くなる。


「お前‥その人達が連れてきた援軍とかは考えられないの?」

「ない。彼女達‥特にお姉は蟹座でMVPを取った凄腕。見ず知らずの男に頼る程弱くはない」


 彼の口から出てきた姉の存在だが、あの戦いでMVPを取ったのはうちの妹一人しかいない。勝手に身内を姉扱いされると、無意識に目の前の男に良くは見えなくなる。


「君の言うお姉とは‥知り合いだよ。一緒に来たんだって」

「絶対ありえない。ヴァルキュリアはどんな事があっても男をパーティには入れない気高さを持ってる‥嘘だな?」


 なお、現在パーティを組んでいるため、少年の語る言葉が逆に噓となる。その事実が不思議と気分を高揚させる。きっと、目の前の男にマウントが取りたくなったのだろう。そう思うと、年下相手にムキになっている自分が嫌になる。


(馬鹿らしい‥シオン早く来ないかな‥)


 疑惑の解決には彼女達の到着が一番の近道である。上手く打ち解けられないのが気分を落とす。どうするべきか悩んでいると、小さな足音が二組聞こえてくる。その内の一人は、明かりに照らされて姿を現した。


「ああ!やっと見つけた!ネイビー!」

「‥あ、お姉の声だ!」


(お姉‥か。何か複雑‥)


 ネイビーがお姉と呼ぶ先には別のエリアを経由して来たのであろうシオンと絶壁が居た。迷うことなくシオンの下へと走り出したネイビーはそのまま彼女に思いっきり抱きついた。その光景を面白そうに眺めている絶壁は立ち尽くす俺のところに来るとニヤニヤした表情で尋ねてくる。


「へぇ‥話と違って両想いか。そこんとこ兄視点だとどうなの?」


 絶対にこの女には悟られたくないと、断固とした決意の元で平常を装う。


「微笑ましいとしか‥だって、シオンに彼氏いた記憶ないし」

「あらら、そうなんだ。胸?やはり胸?」


 後ろの言葉を強調してくる絶壁から逃れようと、視線をシオンの方へと戻すと、彼女は頬を赤く染めて恥じらう仕草をしていた。


「どうした?念願のネイビーだぞ?」

「違うから‥元々こいつの救出が目的なだけで‥」

「おんやぁ?前のエリアじゃたかだか司書探しでマップぶち壊した癖にぃ?」


 絶壁の煽るような口調に頬の赤みが増す。逸れていた二人のお題も俺たちと同じく司書探しのようである。詳細が気になったので隣にいた絶壁へと声をかける。


「絶壁の方も似たようなお題か。こっちは運良く禁忌書物庫の鍵くれたよ」

「それ本当?あたし達は鍵なんてもらえなかったわ。これグレイ達居なきゃここで詰んでるじゃん」

「言われてみれば‥先に来たネイビーとか確実に詰んでたな」


 どんな神経してたら、あそこまで理解しがたいダンジョンになるのやら。

 俺がパスタの化け物や幽霊の司書を懐かしむように思い出す。扉に取り付けられていた鍵穴から中心に光が溢れ出す。

 思わずそのまぶしさに手で目を覆うと、懐からも同様の光が溢れ出し、鍵穴からの光と結びつく。


「鍵が反応してる‥開くぞ!」


 やがて、錠前が外れる音と共に曼荼羅模様の魔法陣が消える。

 それによって、俺たちの前をふさいでいた巨大な扉は独りでに開き始めた。


「やっとここまで来たね」

「長かった‥本っ当に馬鹿みたいな魔導書館だよ」


 扉の先には先程までの薄暗い通路から一転して充分な光源による明かりが確保されている大部屋であった。最初に目に入ったのは部屋の中央に作られた銀の台座の上に置かれた大きめの本である。また、壁には他の通路同様に沢山の本が敷き詰められていた。それでも他の本に比べて一回り大きな台座の本に全員の視線は一斉に集まった。


「あの大事そうに置かれてるのがアークかな?」

「そう思うなら貴方が自分で持って来てよ」


 隣から刺すように言ったのは出会った当初から俺を快く思っていないネイビーである。先程までシオンにべったりくっついていた筈だが、いつの間にか彼女の前に立っている。その変わりように何だとツッコミたいが、一々こんな事で心が乱れるのは虚しいものである。腕を組んで深呼吸をした俺は、逆に彼へその根拠を尋ねた。


「見え見えの罠に対策無しで行けと?」

「‥男なんだから女性を守りなよ。行かないなら僕が行く」

「ちょっとネイビー、待ちなさい!」


 俺にそう言ったネイビーは制止させようとするシオンの声も聞かず一直線にアークらしき台座目掛けて走っていく。素晴らしいことを言っているように見えて、既に女性に迷惑をかけたことに気付いていればいいのだが。とても、そんな風には見えない。


「よいしょ‥重いな‥」

「こら!ネイビー!早く戻りなさい!」


 シオンに急かされた彼は本を台座から下ろすと両手で持って此方を振り返る。


「大丈夫だってお姉、ほら何も‥起きて‥」


 ふと、ネイビーは明るくなった部屋で自らの足元に巨大な影が出来たことに気づく。当然、台座から離れている俺たちにはネイビーの背後に突如として現れた生物に視線が集まっていた。あまりに異質な風貌に全員が同じことを考えていた中で、それを代表するかのごとく絶壁が口を開いた。


「さっきも思ってたけどさ…伝説の魔女って趣味悪くない?」

「まだユノがこうした可能性があるから‥」


 見ず知らずのNPCとはいえ、フォローのつもりで俺はそう答える。だが、それも虚しく、優しさも遠慮も甘えもない最後の闘いを告げるための天の声が再び聞こえ始める。


「招かれざる客達よ。ここまで来たからには覚悟はあるな?ならば、この鬼からも切り抜けることができるであろう‥フッ」


(笑った?プログラム通りに喋ってない?この声すらNPCが見て喋っている?)


 最後に少しだけ笑った。ただ、それだけでもこの世界では、大きな違和感に発展する。ヒトらしいは、プログラムらしくないから反転して、βテスターの可能性を引き出すヒントになる。しかし、そんなことに時間を感けている暇はなく、目の前の試練に全身全霊をかけて挑む方が重要であった。


「さぁ、この門番を見事に超えて見せよ」


 本棚の上から巨大な人型の物体が隕石のように落ちてくる。着地と同時に魔導書館全体が大きく揺れて、こちらは踏ん張らなければ倒れてしまう。降りてきたのは最後らしくマトモじゃない生き物。初見の感想を絶壁が述べた。


「映画とかでさ、フランケンシュタインっていたよね‥ツギハギだらけの奴でさ‥」

「あのボルトが埋められた大男のか‥なら、せめて人間だけでツギハギして欲しかった‥こんなに気持ち悪いとは」


 違和感の塊。それが最初に抱いた感想である。引き締まった肉体は濃い紫で色づき、いぼのようなできものが体の至る所に出来ていた。更に、不格好で肥大した手を見ると異様に長く伸びた爪が生えている。人間というには禍々しく、これと言った他の動物にも当てはまらないから鬼。両手にそれぞれ本に使う琹のような刃のないノコギリを持っており、その剛腕で振り回すつもりだろう。

 そんな生物の頭がよりによって緑色の本に挿げ替えられている。


「本の頭って前見える‥のか‥?」

「さしずめ馬頭鬼めずきならぬ本頭鬼ほんずきってとこ?うわぁセンスねぇ‥魔女の感性疑うわ」


 絶壁の言うように、その不釣り合いなバランスには初見なら唖然する他なかった。

 しかし、シオンはすぐ様我に返ってネイビーへ視線を落とし、鬼を見上げていた俺の方を向く。


「お兄ちゃん、意味不明な事言ってないで弓構えて!私がネイビーを回収する!」

「‥あぁ!分かった!絶壁、シオンの援護頼めるか?」


 少々無理な注文をしようと絶壁の方を向くと、準備万全とでも言いたげに自分の弓を取り出し構えていた。


「目の位置が不明だから手から武器を切り離せ!タイミングはシオンが動くと同時だ!」

「あ〜いよ!」


 片目を瞑りながら余裕を持って弓で狙いを定めている。


「シオン!」

十握剣トツカノツルギ、起動。八百万の神々よ、力を貸して」


 蟹座でも見せた十二単に袖を通すと、転移始めに走り出すための一歩を踏み出す。

 そして、音と共に少女が消える。


「転召『天照』」


 同時に真横からは幾重にも重なり合った空気の裂ける音が聞こえてくる。


「速射の頂きを見せてやるよ」


 重なり合った音の厚さと重さからして絶壁の放った矢は一秒間に12本。音が鳴り響くのは発射音が同時に被るから。普通ならまずここで異常だと思うが、彼女の場合それだけではない。僅かな発射時のブレを利用して全てが別々の場所を射抜いている。矢は本頭鬼の両手の指と手首、それも腱の部分に1本ずつ正確に刺さる。


「理解する前に12の矢。気づいた時には刺さってる」

「先の先か‥いつか俺も‥やってみたい」

「今度教えてあげる。んで、理解する頃には倍になる」


 続けて放たれた12の矢は最初に刺さった部位へと後から一ミリの誤差もなく刺さる。

 最初の12本は押し込むように本頭鬼ほんずきの身体に埋め込まれていく。最速最短の矢は、鬼の手に痛みと脱力を与え、僅かだが手の握りを緩くさせる。その証拠に、豪快な音を立ててノコギリ斧は床に落ちていった。


「一丁上り〜」


 その隙に、シオンは一度目の転移でネイビーの元へと辿り着く。


「さぁ、グレイ!あんたの番!」

「毒だけはうみへび座のお陰で自信がある!安心しろ」


 シオンが二連続で転移するには時間が少し必要になる。

 その隙を埋めるために、俺はアンタレスに毒矢を仕込んで頭、腕、足、胴の四ヶ所に放った。身体が紫色のため効いているかは今一つだが、時間は作れたようで真横にネイビーを担いだシオンが現れる。


「うん、上手くいった。流石だな」

「褒めてる暇あったらしっかり毒の蓄積を確認しとけ。今日のグレイはそれが役割だからな」

「‥反論できねぇ」

「悔しかったら、あたしより上手くなってみなよ。常に二番手は悔しいだけじゃすまねぇぜ?」


 誇らしげにそう言う絶壁に今は嫉妬よりも頼もしさを感じる。

 シオンはネイビーを大事に抱きしめると、優しく諭すように語りかけていた。


「全く‥いいネイビー?勝手に動かないでよ…」

「えへへ‥ごめんなさい‥」


 この男説教なのに何故に嬉しそうなのか。変わった少年にほんの一欠片の興味と苛立ちを覚えると、床が軋む音が向かいの方向から聞こえてくる。


「おや、ようやく臨戦態勢とは…遅いねぇ」


 大気が震える程の振動と、かの鬼から巻き上がるような空気の流れ。緊迫した状況の中、自分の呼吸の音が深い集中により落ち着いていくのが感じられる。


「来るぞ‥」


 鬼はノコギリ斧を両手で持ち直すと、前へ突き出し頭を下げて姿勢を低くする。


「突っ込んでくる、散れ!」


 床板が割れるほどの力みが入った鬼の足は、大地を抉りながら動き出す。ただし、大きな足で力強く蹴り出した割には速度は遅く、見てからでも十分に回避の時間は取れた。

 それぞれが左右に散る形になるも頭を下げて突進している鬼は進行方向の本棚にも気づかず斧ごと突き刺して激突した。


「知能は低いし速度も遅めだ、シオンを中心に削りきるぞ」

「分かった。ぜ、ぜ、絶壁‥さん。ネイビーをお願いします‥」


 物凄く嫌そうな顔をしながら絶壁に頼むシオンだが、僅かでも私情に負けないで判断してくれてありがたい。

 これが、アイシャやリミアやミルだと、全部自分で出来ると言って助けを借りないのが目に見えている。


「ほいほいほ〜い。さぁ希有なショタっ子。こっちで楽園を見せてあげるよ」


 絶壁がアークを抱えたネイビーを引っ張って行く間に、本頭鬼は突進から起き上がり、態勢を立て直していた。

 やがて、振り返ると閉じていた頭の本を開く。そこには他の本と変わらずに文字の羅列が書かれているだけである。


「結局、開いた本の頭にも眼はないのかよ‥どこで前見てるんだ?」

「でも、何かはあるよ。お兄ちゃんもう一回あれの懐に入るから気をそらして」

「危険過ぎないか?お前の転移はクールタイムあるだろ?」

「それでも離脱のリスクは私が一番低い」


 自信満々な言葉に反論は出来なかった。やむなく、俺はアンタレスを構えて即座に本の頭を狙い撃つ。

 同時にシオンは、勢いよく駆け出すと十握剣の刀身に稲妻を纏わせる。

 本頭鬼はシオンに向けてゆったりとだがノコギリ斧を振り下ろす。


「万雷を来たれ、召雷『武甕槌』」


 振り下ろされる斧を軽々躱したシオンは刀で空を斬り、衝撃波のように雷撃を放った。

 避けることも出来ない本頭鬼は痺れているような動きを見せて膝をつく。


 この時、遠くにいた俺はほんの一瞬だが、本頭鬼の頭にある開かれたページが光ったように見えた。


「追い討ち決める」


 シオンは本頭鬼がついた膝の上に飛び乗ると、上に向かって飛び上がり、そのまま本の頭を勢いよく袈裟斬りする。


 たまらず、本頭鬼はくぐもった悲鳴を上げて後ろへと身体を逸らしていく。

 シオンは優雅に着地して、倒れた本頭鬼に目をやる。


「とりあえず‥これで様子見だね」


 シオンが言うようにまだ本頭鬼の体力は半分以上残っている。

 だが、ここからが本番だ。

 敵にどんな変化が起こるか分からない。


「シオン、奴が起き上がるぞ!」

「分かってる、ここからは私達だけで行けるか‥?」


 緊迫した雰囲気の中、起き上がった本頭鬼はノコギリ斧を手に取らずに構えをとる。


「素手ってあの斧飾りかよ‥」


 シオンもカウンターを取るつもりで刀を前に構える。本頭鬼はすぐに、右手を握りシオン目掛けて拳を振り下ろす。シオンにとっては頭にカウンターを入れる絶好のチャンスでもある。先程よりも少し速い攻撃に落ち着きを保ち冷静にタイミングを見計らう。


「見えた、転召『天照』!」


 シオンが転移によるカウンターを入れる時、俺には再び本頭鬼の頭に書かれた文字が光るのが見えた。


 ◇◇◇◇


 一方、彼女から少し離れた位置に居たネイビーは絶壁に抱き抱えられていた。


「汗でベタベタの身体で触んないでよ」


 強引に振り回すネイビーをけらけら笑いながら絶壁は握りを強くしてあやす。


「まだまだお子様は胸の価値が分かってないなぁ」

「要らない!戦う!」


 よほどシオンと離れたくなかったのか絶壁の呪縛を振り解いて頭鬼の方へと走り出していく。

 あまりのことに絶壁は驚きよりも感心しかない。


「ありゃ、男はやっぱり力あるねぇ」


 これにより、生まれたネイビーの孤立。

 それは、不幸にもシオンの天照と同タイミングであり、自身の愚鈍さを俺たちに印象づけていた本頭鬼の狙い通りの展開であった。


「‥‥‥レ」


 最初に気づいたのはカウンターで本頭鬼の前に転移したシオン。

 目を見開いてすぐに気づいたのは、目の前に居るはずの本頭鬼が居ないこと。


「‥‥モ‥‥レ」

「え‥?」


 次に気づいたのは、ネイビー。

 目の前に居ないはずの本頭鬼が斧を落として手で己を覆い被せていること。


「‥‥モ‥ニ‥レ」

「なんで‥また目の前に‥?」


 そして、少し離れた位置から見ていた俺と絶壁が同時に狙いに気づく。


「マジかよ、おい‥」

「グレイ、奴を止めて!」


 ありえないことだが確かにあの本頭鬼は、シオンと同時に『転移』し、ネイビーの下へと現れた。


「ネイビー、逃げて!」


 シオンの声も虚しくあまりの出来事にネイビーは硬直していた。

 それを分かっているかのように本頭鬼の手はネイビーへと迫る。


「オ‥モ‥ニ‥レ」


 彼一人を覆い隠せる程に大きな手は腰を抜かしたネイビーの上で停止する。


「あ‥ああ‥‥」

「ネイビー!」


 頼みのシオンも先の転移直後であることや完全な不意をつかれたことがあり、間に合いそうにない。俺たちも相手がシオンと同じく転移できるとは想定もしていなかったため、ネイビーとは距離があった。最悪なことに、振り返り弓を構えるのが俺には精一杯。絶壁は既に発射していたが、不意の一撃が結末への決定打になる。


「オマエモホンニナァレ」


 宣告の後、ネイビーの形は有象有象の魔導書と何一つ変わらない平凡な一冊の本と化していた。

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