第3章:友愛の蟹座
第1話 保険程度に聖女ちゃんを
リミアと共に、ケイトスに向かう事になった俺は、彼女がそこで合流しようとしている人物に対する保険を連れて行くという話が出てきた。
彼女曰く、あった方が色々と都合が良いらしい。
「まずは、保険役の人に会いにいきましょう」
「それは分かったけど、どうしてここ?」
こうして俺がリミアに連れてこられた場所は、解放戦線の人達が必死に復興作業をしている現場だった。
大熊座戦によって、大部分が壊滅したミュケの街は、アップデートにより復興クエストと銘打って報酬のもらえるクエストとなり、近々ポータルを通って他のエリアからも復興支援に来てくれるようになったらしい。
「でも、この中に卒業生の人に対して保険になる人なんていたのか?」
「いますよー、
へえ……え、彼女が!?
「北の聖女ことマリアちゃんは、実は今回会う卒業生さんの知り合いなんですよねー」
この時点で俺は、まともな人間と知り合いになれそうな卒業生ことMBO引退者を思い浮かべる。…ダメだ思いつかない。
「やっぱり、教えてくれよ。今度会うのは誰なんだ?」
「何度も言うようにー、それは会ってのお楽しみですよー」
マリアは、解放戦線のメンバーと共に、瓦礫を片づけたり、バリケード設置をしていた。
現在のミュケは、中央エリアの王都メトロイアで新たに発生した復興クエストのお陰で沢山のプレイヤーが、参加して復興に協力してくれている。
いずれは元の街並みを取り戻せるだろう。
マリアは、俺たちに気づくと作業を中断して、わざわざ走って来てくれた。
「グレイさん!どうしたんですか!?まさか、グレイさんもこの街から出ていくんですか!?」
「あーまあ、そんな感じなんだけど…」
「初めましてー聖女さん。グレイさんのー彼女のリミアですー。いつもーお世話になっておりまーす」
リミアが、わざと間に入り主張強めに、笑顔で自己紹介をする。
マリアは、にこやかな笑顔で対応する。
「へ、へえ。グレイさんのご友人でしたか…。それで今日はお二人でどのような」
「本当の事なんですけどねー。まあ本題に入ると貴女にー、私達と一緒にケイトスに来てほしいんですよ」
突然の誘いに、マリアは何で自分なのかと疑問に持ったらしい。
そもそも彼女はパーティーを組んでいる。
俺の記憶では固定パーティーのはずだ。簡単には抜けられないだろう。
「え?私ですか!?でも私にはパーティーが…」
「臨時で構いませんのでー、パーティーの方々にはー、私の方から先ほど許可を頂きましたー。確認してもらってもー構いません。しっかりと今回限りということでー話はつけてあります」
この悪魔いつの間に…………
リミアの説得を信じきれないのか、彼女はすぐさま自らのパーティーメンバーに連絡を取る。
「え!いいの?でもみんなは………うん、うん、ありがとう」
細かいアップデート調整にあったボイスチャット機能で確認した所、彼女のパーティーメンバーは、復興支援を優先していたが、そのせいでマリアが冒険出来ない事を少し悔やんでおり、そこにリミアが付け込む形で話をすすめたらしい。
「付け込んでないですよー。れっきとした交渉です」
まるで信じられないが、これ以上の詮索は野暮だろう。
マリアは、パーティーメンバーからの許可もあった事が確認できたからか、安心して俺達に協力を申し出てくれた。
「えと、私で良ければ喜んで同行させていただきますよ。グレイさん」
「そうか、助かるよ。ウチはヒーラーいないからさ」
「グレイさーん、私ヒーラーでーす!」
リミアの声は無視した俺は、直ぐにでも出発する事を告げて、装備を準備した彼女と共にミュケの街を出る。
街から出てケイトスに向かう途中、マリアは旅の目的を聞いてくる。
そういえば全く話していなかった。
よく俺達に付いてきてくれたなぁと今更ながら思う。
「ケイトスに行くのはどうしてなんですか?やっぱりダンジョンを攻略する為に?」
「いや、この不貞腐れた自称ヒーラーが誰かと合流して冒険するらしくてね。その人を拾ってから冒険に行くらしい。だからダンジョンじゃないよ」
「まぁ、三人じゃ厳しいですもんねー」
俺とマリアは、和やかに雑談しながら目的地を目指す。
隣にいたリミアは、納得いかない状況で不満を漏らす。
「別に三人でも余裕ですよー。今回はあの人の呼び出しがなければデートするつもりだったのにー」
俺はこの時ようやくリミアを軽々しく呼び出せる卒業生に目星がつき始める。
MBO時代よりも前、リミアが俺に色々となすりつけたゲームで、数少ない
その女性は、とても変わり者で、とても自己中で、俗に言う最低の人間だったが、何故か仲のいい人あった。
付き合いも長い方で、珍しく引退記念のパーティーまでやった人。俺にとっては姉みたいな人でもある。
「まさかとは思うが、MBOじゃなくてGB7時代の人か?」
「さあーどうでしょう?そうかもしれませんねー」
ジャンルは異種格闘技をテーマに、決められた
因みに、彼女は元4位で、俺はあのゲームで一度も勝てなかった。
「いーやあの人だね。お前が素直に言う事聞くのは彼女ぐらいだよ。返してない借りが山のようにあるもんな」
「私これでも自分より年上の人には全員素直に従うんですよー」
噓つけ、明らかに年上の大佐とかと真っ向から反抗する質のくせに。
「あの、その人って結構年上なんですか?」
「多分そう。俺には年の離れたお姉さんって感じ。
「姉じゃありませんよ、あんなオバサン。もういーいですよー、後はお楽しみって事でー」
リミアがまた拗ね始めた事で、流石に可哀想になってきた俺は、この辺りで話を切り上げる事にした。
その後は、マリアがミュケで何をしていたのかについて話していた。
夜、俺が見張り番をしていると、近くの草むらが揺れると同時に一匹のヘビが這い出てくる。
その姿は忘れもしないエレネの使い魔サビークだった。
現れたのはサビークだけで、彼女の姿はない。
「サビークか?エレネはどこ行った?」
そのヘビは、何も言わず口の中からポーションの入った瓶を吐き出した。
「うわ、ベトベトじゃん…他に輸送方法ないのか?」
「シャーー!」
サビークは、怒ってしまったようで、ここに来た用件も言わずに、草むらの中に帰ってしまった。
その場に残されたポーションを見ると、ある名称が付けられていた。
『火消し瓶(製作者アンリカ)』
「どんな炎も消す薬って…何の餞別だよ…つかアンリカって誰だよ……」
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