第2章:鉄壁の獅子座

第1話 2日後にエリシュオン王国で!

 無事にミュケの街にたどり着いた俺たちは、疲れがたまっていたこともあり、ギルドに顔を出すのは明日になった。部屋に戻った俺は、先程の手に入れたMVP報酬の白紫の弓を眺めていた。


「やっぱ、ボスドロップ武器はスペックが異常だな」


「名前:紫電蠍弓しでんかっきゅうアンタレス

 効果:使用する毒矢の効果倍増

 武器スキル:アクティブ≪白雷神槍ライトニングレイ≫一直線上に超高火力のレーザーを発射する。

       パッシブ≪拡散放射≫番えた矢の2倍発射する        」


 シンとアイシャはそれぞれ鎧とローブをもらったらしいが、やはりスペックは今ある装備とは一線を画しているらしい。レベルも討伐時に50まで上げられたので、あのサソリは一体何レベルだったのか想像もつかない。しかし、これによって二次職にクラスアップしてから獅子に挑む計画プランが出来た。明日はギルドで今後の予定でも話すか、そう決めて俺は眠りに着いた。


 翌朝ギルドに行こうと宿を出ると、聖女ちゃんことマリアが急いで駆け寄ってくる。数日会ってないだけだが、体感では長い間会ってなかったように感じる。


「久しぶり、無事に獅子への攻略法見つけたよ」


「グレイさん!今はそれどころじゃないんです、急いでギルドに来てください!」


 何やら慌てているため、走ってギルドに向かい、中に入るとシンがライオットさん達と向かい合い一触即発の状態となっていた。


「え、どういう状況?」


 俺に気づいたシンが事情を説明する。


「どうもこの人達、昨日実装されたクラン機能を使って勝手に解放戦線を設立したらしいんだ」


「別にそのぐらいよくないか?」


「その件は、まだいいんだけど。前に僕たちが森林地帯の奥地に行ったのをルール違反と言っててね。そんな人達は、クランには入れられないから街から出て行ってほしいって」


「なんだそれ!?勝手すぎないか?」


 ライオットが話に割り込んでくる。


「勝手なのは君たちの方だ、森林地帯の奥地は危険と俺たちを行かせずに自分たちは、こっそりと向かって、アイテムを手に入れる。これのどこが勝手ではないんだ」


「それは、毒入手には危険が伴うからで………」


 ライオットは俺の反論に声をかぶせてくる。


「むしろそれなら三人で行く必要はない。何も相談をせずに、勝手な行動をしたのは事実だ。この責任はしっかりと取れ!」


 他のプレイヤーも賛同しており、俺たちは完全孤立となっている。それを見ていたアイシャは、ライオットの眼を見て、


「ライオット、本気なのね?」


「本気も何も当たり前のことだ、あなたは、もういらない」


 それを聞き、どこか安心した様子で、


「わかったわ、グレイ!ありったけの毒ポーションを置いていきなさい!今日の昼には街から出ていくわよ!」


「折角手に入れた獅子用の毒アイテムだぞ!?いいのかアイシャ?」


「彼らが上手いこと使うわよ、ほらさっさと行くわよ」


 俺は毒ポーションをボックスから半分ほど取り出し、テーブルの上に置く。


「餞別よ、私たちはこれでいなくなるから。あなた達も精々頑張りなさい」


 そう言って出ていくアイシャを俺とシンは追いかけていった。3人でギルドを出た後、アイシャに連れられて俺たちは、街外れのカフェに立ち寄った。


「これからどうするの?僕たち今日中には、この街を出ないといけないんだよ」


「それに、行き先があるのか?北エリアはまだこの街しか存在してないだろ」


 アイシャはそれに対して、


「私たちはこれから中央エリアに向かうわよ」


「南の方って、まだ封鎖されてるんじゃなかったのか?」


「あんた達、昨日チャットの掲示板とか見て情報収集しなかったの?戦争は帝国の勝利、それによって国境封鎖は解除されてる。今なら東西南北含め、新エリアの中央エリアも解禁されているわよ。調べた限りじゃクラスアップは、中央エリアにある王国で行なうのが一番手っ取り早い。それに……………」


「それに?」


「昨日色んなプレイヤーに獅子討伐を呼びかけたの、2日後に王国で有志を集まるわ。そのメンバーで獅子を狩りに行く」


「アイシャ、いつの間にそんな事を…なんだかんだこの街の人達が心配なんだね」


「そうでもないわよ、私たちが戻って来るまでに勝手に挑んだら壊滅する。まあ、今の彼ならそんなことは心配するまでもなさそうだったから、私も中央エリアに行けるけど」


「それで、誰に声を掛けたんだ?」


「それは着いてからのお楽しみと言いたい所だけど、あんた達がよく知ってる変人も何人かには声を掛けたわよ」


「え……まさか………あいつらMBOランカー?」


「その通り、私たちの名前が全体チャットに載ったことで別エリアの馬鹿達ランカーもやる気が出たみたい。今回声をかけてダメだったのは『姫』と『ラプラス』よ」


「あいつらもやってんのかよ!!これ2ヶ月あればクリアできるんじゃない?特にラプラスとかチートじゃん」


「まあ、姫は案の定活動が忙しいから断られたし、ラプラスは準備にまだ時間がかかるみたいだから来れないって言ってたけど。その代わり、オープンワールド界隈で有名な『犯罪者デッドマン』は呼べたわ」


 シンはあからさまに嫌そうな顔をして、


「えー彼が来るの?一緒にいたら僕たちも犯罪者扱いされない?」


「ほっといても会いに来るらしかったから、諦めなさい。それと、南エリアの知り合いは、何人か面白いのが来るわよ。これを機に中央へ移住するつもりらしかったから次いでに参加するって」


 南か……紫音がいるかもしれない所だ。


「南って言えば、昨日ちょこっとだけ見たけど、『ヴァルキュリア』って呼ばれてる女性パーティーが一番強いんだって。何ならその人達も呼ばない?」


「いや、絶対ダメ」


 アイシャは何か嫌がる理由があるようだ


「アイシャ?何かあったのか」


「私だって、各エリアで一番強い人達の事ぐらい調べるわよ。それで気になって、パーティーメンバーを調べたの。そうしたら居たのよ、私の姉妹が」


「あー仲悪いんだっけ?でもデスゲームだしそんな事気にしてる余裕はないんじゃないかな」


 いや、なんとなくだがアイシャが嫌な理由は俺と同じ理由だろう。


「馬鹿野郎シン、アイシャは姉妹を巻き込みたくないんだよ」


「あ…ごめん。迂闊だった」


「いいの、それにグレイにも関係あることよ」


 俺に関係ある事…………まさか………


「おい待て、居たのか………そのパーティーに」




「剣士クラスでの名前があったわ、あなたの妹さんでしょ?」

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