第8話 メール
『まじで今日はめっちゃ楽しかった! ありがと!』
何週間ぶりだろうか。
坂宮とデートをした後、家に帰ってきてからも俺の気分は絶好調だ!
めちゃ元気よく「ただいま!」と、挨拶をしてみれば、妹の
そんな感じで舞い上がりながらも意を決し、数週間ぶりに俺は坂宮にメールを送ってみた。
落ち着かず、スマホを片手にベッドにダイブしごろんごろん、とその上を縦横無尽に転がり回る。五分ほど転がり回っていると、スマホから、ピコン、という音が聞こえてきた。
俺は動きを止める。そして、ベッドから起き上がる。
坂宮からメッセージが届いたことを確認すると、俺は覚悟と勇気を決めて目を瞑りながらも画面をタップする。そして、ゆっくりと目を開いていく。すると、ある文が目に留まった。
『こっちこそ、今日はありがと』
既読すると同時に俺は満足感に浸った。
だが、どうせなら、ありがとの直後にハートマークとか付け加えて欲しかったなあ。
まあ、『ありがと』っていう言葉がもらえただけでも十分か。
俺はスマホを打って文を作っていく。
文面を確認、特に問題はない。ならば!
俺は震える右手を左手で抑えながらもメッセージを送信した。
直後、坂宮とのトークルームに俺のメッセージが顕示された。
『じゃあ、また今度遊ばない?』
汗が頬を伝いながらも、メッセージを送信した後も俺は自分で送ったメッセージを見直していた。
そんなとき、そのメッセージの左下に「既読」の文字が付く。
それは今現在坂宮が俺のメッセージを見てくれているという証拠だった。
どきどきしながらも、返事を待つ。そして、返事は案外にも早く来た。
『別にいいけど。次は
また、坂宮と遊べる! と、テンションマックスだったが二文目を見た瞬間俺の脳裏にはある考えが浮かんでしまった。
「えっと……竜胆と桜も一緒がいいってことはもしかして今日の俺とのデートは楽し
くなかったってことか? 嘘……! まさか坂宮俺と二人きりっていうのをずっと耐えてたの?……だとしたら……最悪だ!!」
俺が叫んだのと同時に俺の部屋の扉が勢いよく開けられる。
「お兄ちゃん! うるさい!」
妹である優花がパジャマ姿で部屋の扉の傍で俺を戒めるかのように真っ直ぐ俺のことを睨んできた。
「ご、ごめん……」
俺が素直に謝ると、優花は怒りを俺に向けてきながら「ふん!」と、言って去ってしまった。
ちなみに、俺と優花の部屋は隣同士なので音もよく聞こえるのだ。
今後は気をつけよ、と自分に注意してから俺は再び坂宮のメールを凝視する。
楽観的に考えろ。坂宮は俺と二人が嫌なんじゃなくて、大人数の方が楽しめるからこんな内容のメールを送信してきたんんだ……そうだ、絶対そうだ!
そうやって自分に言い聞かせながら俺はぴこぴこ、と文字を打っていく。
『そうだな。じゃあ明日の学校で竜胆と桜も誘うか』
そう書いて、恐れながらも坂宮からのメッセージを待っていると三秒後に返信が来た。
『うん』
なんと返信していいのか分からず、俺はそれとなくおにぎりがグッジョブっとやっているスタンプを送信した。
――それ以降、坂宮からの既読マークが付くも返事が来ることはなかった。
彼女の好感度は100なのに、告白成功指数は0の件 刹那理人 @ysistn
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