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12‐カユウ

 私は今日も勉強をしていた。自室で一人、静かな中でペンを走らせる。あまりに静かだと、また耳が眠ってしまったのかと不安になった。それでも、耳を澄ませばシャーペンの芯と紙が擦れる音が聴こえてきたので安心した。


 カレンダーを確認したら、今日は二月二十八日だった。明日からは三月。そうなったら一週間もせず高校の入学試験になる。


 ソヨとフタバの受験が終わってから今日まであっという間だった気がする。毎日ひたすら勉強、時々フタバにもソヨにも教えて貰って勉強、その為の移動時間も勉強……といった感じでここ一ヶ月生活してきた。

 そういえば、フタバとソヨは無事に高校に受かったらしい。よく頑張ったねって頭を撫でて遊んでたら、てれてれと頬を赤くしていた。フタバの顔なのかソヨの顔なのかはよくわからなかった。


 そういえば、といえば、そういえば。

 私が今月、勉強と息抜き以外にやったことがひとつある。女の子らしいことができて私は満足だった。


 二月十四日。


 私はソヨとフタバにチョコレートを贈った。もちろん手作りである。市販の板チョコを溶かして固めただけだが、温度調節とかがとても難しかった。


 渡したときに、ソヨにちょっと引かれた。張り切りすぎたのか、“ワタシ女なのに、本命みたいなチョコ渡されても……”って言われた。

 だってフタバに贈った本命だもん。ソヨには申し訳ないけど。本当は二人別々にしてあげたかったが、お互いの存在はトップシークレットにしてあるようなのでそれはやめておいた。ソヨとフタバもいい友達になれそうなのに残念だ。

 ちなみに当のフタバは嬉しそうにしてた。ただ、目でチョコを確認できない分本命なのは伝わってなさそうだったのが残念だ。


 ぱきん。


 一ヶ月の反省に意識を向けていたら、シャーペンを持つ手が変に力んで芯がポッキリ逝ってしまった。


 あーあ。なんか嫌な気持ち。


 受験、受かるかなぁ。急に不安になってきた。


 ……少し早いけど、ホワイトデーに勇気でも貰えないだろうか。

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