11‐ソヨ

 ズン、ズン、ズン……


 って、そういう音がワタシの好きな音らしい。ワタシのヘッドホンから流れる音楽を私は聞いたことがないが、いつも楽しませてもらってる重低音とやらはそんな音だそうだ。カユウが教えてくれた。


 そんな知識を得たところで、結局ワタシが感じるのは頭に伝わるほんの僅かな振動だけだが。


 ほぼ関係ないが、なんとなくそのリズムが心臓の鼓動に似てる気がした。ワタシの胸に手を当ててみたが、少し思ってたのと違う。ワタシの方がちょっと速い。なにか鼓動が早くなるようなことがあったかな。心当たりはない。


 そういえば、この間カユウを抱きしめた時の心臓はこの重低音のリズムに近かった気がする。あれはワタシの心臓だったのだろうか。それともカユウだろうか。


 さっきから顔が熱い。鏡を見たら、耳が赤くなっていた。耳たぶは身体の中でも冷たい部位だと言うが、今のワタシのそれはなかなかの温度だった。


 フム。


 不思議なこともあるものだ。


 そんなことを思っていたら、重低音の振動が止まった。

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