11

11‐フタバ

 ズン、ズン、ズン……


 ヘッドホンのおかげで強くなったベースの重低音。もちろん他の楽器の音やボーカルの歌声なんかも聴こえるのだが、何故か今日は低音に耳が傾いた。

 時計の音を意識するとその音が強調されたかのように感じる。それと同じような感じで、一回低音を意識してからどうにもそこが際立って聴こえる。


 音楽を聴くが、特に音を楽しもうとしているわけではない。今は適当にぼーっとするBGMになんか垂れ流そうと思っただけだ。歌詞の内容など頭に入ってこない。頭にあるのは僕自身の思考だけ。



 カユウ、なにしてるかな。



 それが自然と脳内に浮かんできた。


 はぁ。全く困ってしまうなあ。


 近頃なんか変だ。カユウ。暇があれば大体カユウのことを考えている。この間ハグをした時からだ。


 しょうがないだろう。これでもそれなりに年頃な男なんだ。だって女の子だ。相手は女の子だったんだ。忘れろという方が難しい。


 ……。


 なんて、カッコつけた感じで理屈を垂らす。自分で言うのもなんだが、素直になれないのだ。

 だって、カユウは友達で、一緒に勉強をする仲で、その音合間に楽しく喋るくらいで、ただそれだけで。

 彼女が気になるなんて、小っ恥ずかしくて。


 ああ、顔が熱い。心臓がドクドク言ってる。


 ふぅ、とため息を一つ。とりあえず音楽を止めてみた。だからなんだ。

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