4-ソヨ

 カユウの手術は今日らしい。

 もう終わっただろうか。今からだろうか。もしくは、今この最中か。


 外は雨が降っていた。そう考えたくはないが、どうも不穏な感じがする。しかし、恵みの雨という言葉もたかった。残念だ。


 カユウの声、聞いてみたかったな。


 ワタシの耳は治る可能性がほぼゼロらしい。というのも、現代医学では解決不能な状態らしいのだ。前例がないとかなんとかって聞いたが、興味はないので忘れてしまった。ワタシは『音』を知らずに一生を終えるのかもしれない。口でお喋りくらいはしてみたかった。


 昨晩撮った動画はカユウに届いただろうか。『BFF』をワタシも使ってみた。おばちゃんが手紙を書かせてくれなかった理由はわからないが、ビデオを許してくれてよかった。現代に生きる女の子のワタシだが、スマートフォンとは無縁の人生を歩んできたので、あんなに簡単に動画を送れるとは思わなかった。

 あれなら、カユウと離れててもお話できる。しかし、カユウもワタシもスマホやパソコンなどは持っていなかった。施設暮らしだから仕方ない。別に欲しいとも思わなかった。


 ……さっきから、カユウ カユウって。

 ワタシはカユウ大好きっ子か。


 大好きっ子だ。友達が好きで何が悪い。


 胸張って友達のことを好きと言うのは、ひょっとしたら難しいのかもしれない。その辺の羞恥心の薄さは、人間関係に疎いワタシの強みかもしれない。要は素直なのだ。誇っていいだろうか。


 胸を軽く叩く。十四歳にもなって全く膨らんでこないことを実感させられ、少し悲しくなった。


 そういえば、カユウの手術のことを考えていたんだった。ワタシの発育はどうでもいい。


 大丈夫かな?


 今度遊びに来た時には、花束でも贈ってあげよう。お花博士を自称するソヨが張り切りましょう。


 ……おばちゃんに、頼んでみよう。


 ワタシは自分の部屋を飛び出した。

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