2-カユウ②
車の上で揺れているこの時間がなんとも言えず退屈だ。行きの時は小説を読んでいたが、今はそんな気分ではない。誰かと話をしたかったが、車内にはハンドルを握っているアサギさんのみ。手話ができるはずもない。
絶対、ソヨと私はいい関係になれる。
もしかしたら、もうなれてるかもしれない。
施設の人にも話せなかったような色んなことをソヨには話した。耳が聞こえないことに関する悩みとか、年頃らしい軽い話とか。
つい、笑みが漏れる。
次に会えるのは何時だろう。明日か。明後日か。残念ながら、短くてもひと月くらいは空いてしまうだろう。
頭の中で今日の会話の内容を繰り返す。
最初の挨拶。私と同じ漢字の花。ヘッドホンと花火。その後は、私の趣味の読書の話とか。お互い、友達がいなくて引きこもってることとか。施設での暮らしがどうとか。
目を閉じて、脳内に映像を思い浮かべているうちに、とあることを思い出した。
こんなことを言うのもなんだが、ソヨって少し変。
時々、口を開いて開けたり閉めたりさせているのだ。アサギさんが誰かと会話するのによく似ている動作だった。例えば、最初に図鑑を見せてくれた時には、ページを撫でて不思議そうな顔をして口を動かしていた。
でも、ソヨが言葉を喋れるはずはない。私と同じで、生まれつき耳が聞こえないらしいのだから。本人も喋れないと言っていたはずだ。だからこそ、変なことしてるなと思った。
まぁでも、それはいいや。
そんな些細なことよりも、友達ができたことを私は喜んだ。
早くまた会いたいなぁ。夕日の差し込む車内でそんなことを考えた。
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