第2話 駅の立ち食い蕎麦
なんでも、この世には東京という町が存在しているらしい。
東京というのは両方音読み、つまり中国伝来の音である。
「東京という町が存在しているらしい」という先程の文を読んだ時、読者は
「当たり前だろう。日本語で書かれている文なのだから、東京なんて誰でも知っているだろう」、そう思われるかもしれない。
だが、これを江戸時代の人に見せれば、確実に東京と江戸が違う時代の同じ町とは気づかないし、ベトナムのハノイ、―旧名はトンキン、つまりベトナム語読みの「東京」だが、これをまだ漢字が用いられていた時代に見せれば、絶対ハノイ以外の都市を思いつかないだろう。
私はそのような状態に陥りやすい。これを避けるために他人とは違うことを求めつつも淡々と生きるしかなかったのかもしれない。
と、夕食後、妹が風呂に入っているときにそう考えた。
あと、睡眠はやはり必要である。
―これは次の日に起きてから気がついたが、これからどう生活するかを考えるうちに少し頭が痛くなってきたので、睡眠した。さすれば、朝の目覚めは気持ちよかった。気持ちよすぎて気持ち悪かったとでも言ったほうが良いかもしれない。
今日は二日前に出した戸籍関係の書類の受理に伴う説明などの「諸作業」をするために、電車に乗って移動した。
住民サービスといえど、性別の転換はなかなかしない世界なので、小説のように、いや小説全てとは限らないが、お気軽にできるものでもない。二日でできるのはお気軽かと思いきや、そうではなく。
問題なのが思考の指向だ。
まとまらないのは考えでも髪の毛でもなかったなぁ、という話である。
ロングシートの列車がホームに滑り込むというベタな描写。
列車のそばにある立ち食い蕎麦屋。
男性客が多い。
高校生の女子としての役割を果たすには思考と嗜好を変えなければならないのか。
そんなベタなダジャレを考えながら、立ち食い蕎麦屋に入った。
食券を買う。蕎麦が出てきた。今日の昼食は一人で食べる。
7/23/20xx
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