第1章 敵?味方?タケノコ達との遭遇
冒険の始まりトマ
「あのトマトどもおおおお!」
突如として森に放り出された私はトマト達に対し怒り狂っていた。森の中で誰も居ないことをいいことに、思いつく限りの罵詈雑言をわめき散らかした。
「はぁ、はぁ、…これからどうしよう。」
だいぶ気持ちが落ち着いた私はこれからのことを考える。
「まぁ、進むしかないか。」
前に進むしか選択肢はなかった。例えトマト達の国に戻ってもどうせまた強引に扉に放り込まれるに違いない。そもそも元の世界に帰る方法はトマト達しか知らないのだ。大タケノコ殿とやらを倒すしかないだろう。もし元の世界に帰る方法を知らなかったら地獄を見せてやる!
そう決意を瞳に宿し、私は立ち上がった。飛ばされたことで脱げたとんがり帽を拾ってかぶりなおし、ローブを叩いて土を払った。
「よし、ひとまずは森を抜けないと。」
都会暮らしの私としては、森にずっといるのはつらい。食料は大量に貰ったトマトがあるとはいえ、野宿をするのは極力避けたい。お風呂にだって毎日入りたい。トイレがないのも無理。
「…まてよ。」
ここで私は気が付いてしまった。今からは向かうのは敵地。私が彼らの村に行って無事に過ごせるのだろうか。普通なら良くて追放。最悪なのは兵隊とかが襲ってくること。
「…最悪はこっちもやるしかないわよね。別に私はこの世界に無理やり連れてこられただけだし。」
つらい目にあっているためか物騒なことを考える私。
「とりあえず歩き出そう。」
考えていてもしょうがないので私は森の中を歩き始めた。
ト マ ト ク エ ス ト(^^^”)
「つ、つかれる~。」
慣れない森の道を草木をかき分けながら進む私はかなりの疲労が溜まっていた。もうやだ。マジで元の世界に帰りたい。聖良やバイトの店主に会って癒されたい。
「…ノコ。」
「…ノコ。」
「ん?」
なんか近くから声が聞こえる。私は森の中を案内してもらおうとこえのする方に足を進めた。
「パトロールノコ!」
「パトロールノコ!」
そこにはトマト達と同じくらいの大きさの化けタケノコがいた。
私は額に手を当てた。何を考えているのよ私。ここは敵地なのだから敵のタケノコがいるに決まっているじゃない…。
「あっそこに誰かいるノコ!」
「ほんとだノコ!不審者ノコ!」
「しまった。」
タケノコたちに見つかってしまった。どうしよう魔法の使い方いまいち理解できてないのに!
「お前はだれノコ?ここで何をしているノコ?」
タケノコらがこれまたツルみたいな手で持った槍をこちらに向けて聞いてくる。
「ええ~と、ま、迷子になっちゃって!」
てんぱって思わず下手な言い訳をしてしまう私。こんな姿の奴が森で遭難しているわけないし。そもそも人間がいること自体おかしいことじゃないだろうか。
「それは大変ノコ!」
「僕たちが近くの村まで案内するノコ!」
「へ?」
なぜか信じてくれたタケノコ達。しかも村まで案内してくれるらしい。
「さぁ、こっちだノコ!」
「ちょっと距離があるから頑張るノコよ!」
「あっうんありがとう。」
「お安い御用ノコ!」
村へと歩き出したタケノコと私。
タケノコが優しくて歩きながら混乱する私。あれ?タケノコ達が悪さをしているのじゃなかったの?トマト達が嘘をついたのだろうか。
「ねぇ、タケノコさん。貴方たちはここで何をしていたの?」
「僕らは森に悪い奴がいないかパトロールしていたノコ!」
「パトロールねぇ。悪い奴ってどんなのとか?」
トマトとか言われたら、私が赤茄子魔導師ってことを口が裂けても言えない。まぁ、もともと言う気もないけど。
「もちろん悪そうな顔をしている奴に決まっているノコ!」
「…そうなのね。」
彼らの悪い奴の基準は単純であった。生まれつき人相が悪い人は大変だ。
「そういえば自己紹介がまだだったノコ!僕はノコッチ。こっちがノコスケ。よろしくノコ。」
「よろしくノコ~。」
「よ、よろしくね。」
はたしてタケノコ達とよろしくしていいのだろうか。
「人間の名前はなんていうノコ?」
「人間は初めて見たノコ~。」
初めて見たのによく私が人間だと分かったわねこの子ら。しかしどうしようか。私の名前って「とまと」って聞こえるらしいし。本当にトマトとタケノコが対立しているのならまずいはず。
「なんていうノコー?なんていうノコー?」
「教えてノコ~!」
せがんでくるタケノコ達。う~ん。まぁでも、もしかしたら私の名前が「とまと」と聞こえるのはトマト達だけであって、タケノコ達にはちゃんと「あかなす」と聞こえるかもしれない。
「私は赤茄子(あかなす)というの。」
「トマトというノコか!いい名前ノコね!」
「…。」
やっぱり駄目でした。ただ特に敵対心は抱いていないので良かったが。
これでますますタケノコが暴れているというのは怪しくなったが。
「ところでトマトはなんで森の中にいたノコ?」
うっ聞かれたくなかったことを聞かれてしまった。答えないわけにもいかないしどうごまかそう。
「え~と私はね…。」
「おっ!お前ら戻ったノコか!」
私の声を遮り、野太い声で声をかけてくるタケノコが現れた。
「あ、タケノコ将軍ノコ!」
「ただいまノコ~!」
ノコッチたちが手を振り答える。
「おかえりノコ!ん?お前は『伝説の赤茄子魔導師』ノコ!!!」
「えっ」
なぜか唐突に私の正体がばれてしまった…。
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