#4 せんぱいのいえ

「どう?カラカルの扱いにも慣れたんじゃない?」


「そうですね」


心地良さそうな寝顔をカラカルは見せていた。


「かばんさん...、

そう言えばサーバルの食事って...」


「えっ、もちろんカルガモさんに教えて貰ったとおり...」


服を捲ろうとしたかばんに対し、


「ウソ!!ネタじゃないんですかっ!?」


「冗談だよ!ほらこれ。ラッキーさんに

哺乳瓶貰ってあげてるんだ」


「はぁ...、良かった...」

(出ますとか言ったら色々ヤバイだろ...)


「キュルルくんは男の子だからね~。

ミルクが出るのは下のh」


「おいっ!!!!ナチュラルに下ネタもってくんじゃねえよ!!!!!!」


「酷いなぁ...、先に下ネタを振って来たのはキュルルくんの方でしょ?」


「というか、僕の性別は...」


「はい!ここでアンケートです。キュルルくんの性別は?」


「勝手にアンケート取らないでください...。

聞いてるこっちが恥ずかしいですよ...

てか、今回グダグダしすぎじゃないですか?」


「このシリーズはこんなもんでしょ」


そんな下らない話をしているとゆっくりと

モノレールの速度が遅くなり、止まってしまった。


「あれ?どうしたんだろ...」


「あっ!見てあれ!」


かばんが指を差した先、

モノレールの軌道が崩壊している。


「...満州事変だ!

早くリットン調査団を派遣して調べないと...

日本軍の仕業かもしれない!」


「なんで歴史やってるんですかっ!!

違うでしょ!!」


『線路ガ、壊レテルカラ、コノ先二進メナイ』


「はぁー...、つっかえない。

本当に使えないわぁー...、機械のクセに...」


「ちょ、かばんさんっ!ラッキーさんを足で踏んずけちゃダメでしょ!?」


『アッ...//スミマセン、僕ハ無能デス...///』


「何感じてんの!?ちょ、ダメだって!」




結局、走行不可能なのでモノレールを降りることになりました。


「振替輸送でも用意しとけっての...。

こっちは赤子背負ってんのに。

全くパークの職員は無能だよね」


「かばんさんブーメラン刺さってますよ...」


4人が歩いていると...。



「あれっ?かばんちゃん!?」


「えっ?」


自分の名前を唐突に呼ばれ驚きました。


「お久しぶりですー!!

覚えてないですか?私ですよ、私」


「新手のオレオレ詐欺?」


「違いますよ!」


「あの、僕はお初なんですけど」


「ああ、私はアードウルフです。

かばんちゃんを育ててたんですよ」


「育ててた!?

かばんさんってオオカミに育てられてたんですか?」


「いや...、全然覚えてない」


「はぁ?」


キュルルは思わず声を上げた。


「そうですか...、そうですよね...」


「どうしたんですかアードさん...

そんな寂しそうな声だ、出さないでくださいよ」


「長い時の中で記憶という物は加筆訂正されて行くもの...、儚い物です。永遠を求めようだなんて無茶な要求...。平安時代の人々だってその無情さを紙に書き留める程です」


「つまり...」


「...リスカしよ」


「やめろおおおおおっ!!!!」







「子育てについては知識があるんで、

お二人に教えてあげますね。にしても、

あのサーバルさんが赤子になってしなうなんて...」


「信じられませんよ、本当に」


かばんが頷きながら言った。


「ここが私の家です」


連れて来られたのは、洞窟の入口のような、そんな場所だった。


「これが家なんですか?」


「ええ。アリツカゲラさんに紹介してもらって。家賃10JPCですよ」


「10JPCっていくらですか?」


「ジンバブエドルに換算すると10億ジンバブエドルだね」


「なんでジンバブエドルで換算するんですか!?普通円だろ!?」


「ちなみに円換算だと1円にも満たないよ」


「なんだよそれ!?子供銀行の貨幣か!

うまい棒以下の物件ってなに!?」


「住めば都って言うじゃないですか。

結構良い所ですよ」


中に入ったものの、地面が濡れている。


「すみません、なんか地面が...」


「地下水が涌き出てるらしいですよ。

入浴も洗濯も飲み水も全部その水で賄えますからね。節約できるので大助かりです」


(要は汚水をリサイクルして使ってるじゃねーか...!聞かなかった事にしよう...)


どうやら、彼女は大分節約家のようだ。


「あぁ、そうそう。赤ちゃんの育て方教えてさし上げますね。どうぞ、座ってください」


「いや、立ったままで大丈夫です...」


アードの誘いを断り立ったまま聞く事にする。


「赤ちゃんのお世話で避けて通れない重要な事は3つ。あやすこと、食事のこと、衛生の事です。まずあやすことに関しては、あなた方は

上手そうなので割愛させていただくとして...。食事です。まず、ミルクが一番栄養価が高いんです」


「ああっ...、重要性はわかったので、実演はしなくて大丈夫です」


「でも...、せっかくなら...」


その時であった


...ゴゴゴゴッ!!!!

轟音と共に、洞窟の光が奪われた。


「ねえ、アードウルフさん。停電したんですけど」


「かばんさんっ!!!停電じゃないですよ!!

これ土砂崩れで穴の入り口が塞がったんだ!

まずいですよ!!」


「アリツさんが、地盤が緩んでるので気を付けてくれって言ってたのはこの事だったんですね」


「感心してる場合じゃないですよアードウルフさん!僕達石の中に監禁されたんですよ!?」


「あはっ、密室に女3人...、何も起こらないはずもなく...」


「ちょっとあんたさっき僕の事男扱いしてただろ!!それよりどーするんですかこれ!

僕達じゃなくてサーバルとカラカルも死んじゃいますよ!」


「残念だけどキュルル、ここが私達の

人生の終点だよ」


「何回そのフレーズ使うんだ!!」


「おとうさん...おかあさん、うんでくれてありがとう...」


「お前は地面に遺書かいてるんじゃねえっ!」


全員が絶望し掛けたその時だった。


ボカーンッ!!!!!!


再び轟音と共に、明るい日差しが差し込んできた。


「あっ!助かった!」


キュルルが歓喜したのも束の間...


「こんな天照大御神みたいに岩の中に引きこもるなんて卑怯ですよ。かばんさん」


サングラスを掛けた二人組が立っていた。


「あの、どなたですか」


「私は敏腕弁護士、パークに強い弁護士と言われているセンザンコウと」


「そのアシスタントのオオアルマジロです」


「べ、弁護士?」


「かばんさん、あなた先日イエイヌさんの家にプリウスで突っ込みましたね?そのまま車を放置し逃走した」


「えっ、未来からじゃないんですか?」


「あはっ...、そうだよキュルル...

私は...、嘘をついて逃げてきたんだ...」


力なく笑いながら言った。


「被害届が出ているので、告訴するのと同時に強制出廷を求めます。森林裁判所へ行きましょう」


「無駄な抵抗しやがって」


かばんはなんと、2人のアルマジロに連れていかれてしまいました。


「どうしようっ!!!

赤ちゃんそっちのけで主役が連行されたあああああああっ!!!!!!」


「落ち着いてください、キュルルさん」


アードウルフが肩を叩いた。


「裁判なら、無罪になればいいんです!

赤ちゃん連れて、戦いに行きましょう!」


「アードさん...、はい!」


サーバルを抱くと泣き始めた。


「うぇええええん...」


「大丈夫だよサーバル...、君の友達は

僕らが必ず取り返す!!」


「あっ、キュルルさん」


「ん?」


「カラカルさんの...、オムツを替えてください」


「えっ、何それは...」


続く!



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