#3 ふなよい
前回、サーバルとカラカルを元に戻すべく
モノレールに乗ったキュルル達一行だったが、亜津阿人民共和国の領土にパスポート無しで立ち入ってしまったため、スパイの容疑で拘束されるが、なんとか解放され、一行は次なるエリアに向かうのだった。
「すごい...」
眼下には青く澄んだ海が広がっていた。
「海っていいよね」
かばんが言った。
腕に抱かれたサーバルはぐっすり眠っている。
「何だかんだ、かばんさんもあやすの上手いじゃないですか」
「そうかな...」
「僕なんて...」
カラカルはあうあうと声を出し手足を小さく動かしていた。彼女が成人体のままだったら、どんな旅になったろう。
『次ハ、カイジュウエン...』
ゴールデンセルリアンの聞き込みをしなければいけない。かいじゅうえんという場所で降りた。
「何があるんですか、ここ」
「かいじゅうえんはその名前の通り、
放射能を食べて大きくなった生物が海の底に
眠っていてそれの研究をしているからかいじゅうえんっていうんだよ」
するとキュルルは徐にスケッチブックを
取り出し、
【×怪獣 ◎海獣】と書いた。
「それなんてゴジラですか!?
ゴジラのフレンズがいるとでも!?
無人モノレール爆弾でもぶつけるんですか?」
「え?ゴジラ嫌いなの?そうだなぁ。
じゃあ、デカイ蛾の幼虫が...」
「モスラでもないよ!」
(この人本当にパークガイドなのか...?)
咳払いをした。
「茶番はともかく...、誰かに聞き込みをしないと...」
「あそこに誰かいるよ、行こう」
そこへ行くと2人のフレンズが球で遊んでいた。
「あのー、すみません」
キュルルが声を掛けた。
「あっ!」
片方が気付いた。
「わたしはバンドウイルカ!」
「私がカリフォルニアアシカ」
そう挨拶するとちょっとした曲芸的なもの見せつけてくる。頭の上でボールを落とさないようにしている。
そして、宙に上げアシカの方にボールを渡した。
また器用に扱い、イルカに戻した。
「はい!」
「...ごほうびちょうだい!」
「はっ?」
キュルルは驚いた。
あんなので報酬をねだるのかと。
生憎何も持ち合わせていない。
「か、かばんさん、なにか持ってますか?」
すると鞄の中からあるものを取り出した。
「このジャパリコーラ、飲んでみたくないですか?私とじゃんけんして勝ったら、差し上げます」
「...いいよ?」
イルカは表情を一切変えずに了承した。
「いいの!?」
「行くよ。じゃーんけーん、チョキ」
イルカの手はパーだった。
「私の勝ち。何で負けたのか、明日まで考えといてください。負けは次に繋がるチャンスです。一日一回勝負、では、いただきます」
「お前が飲むんかいっ!!」
「うぇえええええん...!!!酷いよおおおおおっ!!!」
急にイルカは大泣きし始めた。
「ほら!かばんさんが空気読めないことしたから...」
「煽られたよおおおぉぉぉ...」
「そんな理由!?」
「ああ、可哀想に...。
あなた達っ、なんて失敬な!」
「バンドウはゆで卵でも食っとけって話でしょ?」
「辛辣すぎでしょ!!」
コールドスリープしていた分、先輩として指摘しなければいけない。
「だって、ご褒美がないんだよ」
「さっきのコーラあげれば良かっただろ!!」
「いやぁ、喉乾いちゃったし...」
「あなた達は大罪を犯した!
天罰を下さないといけないわ...、ここが人生の終点よ!」
「そのセリフ3回目だよ!!」
「大人しくしなさい!」
サーバルとカラカル共々捕まってしまった。
船に連れ込まれた。
「うぇえええええん...」
カラカルが異様に泣きまくる。
「僕達をどうする気ですか!?
奴隷として売り飛ばす気ですか!?」
「海底に沈めてやるわ。
最近うみのごきげんが悪いから、
あんたたちを生け贄に捧げる!」
「古いやり方ですね。中世ヨーロッパかなにかですか?」
「ちょっと!かばんさん!火に油注ぐような事は言わないでくださいよ!」
「まずはこのうるさい赤ん坊から処刑するわ」
アシカは二人の子を両腕に抱えると船の先頭に立った。
「あああっ!!ダメダメダメっ!!」
「元はと言えば、ご褒美をくれなかった君たちが悪いんだよ。身から出た錆って知らない?」
「かばんさん!何とかご褒美は...」
彼女の顔を覗くと何やら顔色が悪そうだ。
「...かばんさん?」
「ヴォェッ!」
「ぎゃあああああああっ!!!」
「ひゃあああああああっ!!!!!」
キュルルとバンドウイルカの悲鳴が混じった。
「何事っ!?」
驚いたアシカが振り替える。
「...はぁ...、私、船に弱くて...」
「おいいいいっ!!ふざけるな!!」
「あ、待って...、わたしもヴォェッ」
かばんに続きバンドウイルカも海に向かって吐いた。
「お前もかっ!!!貰いゲ◯だろ!
つか、うみのごきげん更に損ねてどうするよ!!!!」
「気持ち悪っ...、ヴォェッ!」
それを見ていたアシカも
「汚いよ!汚い!あーもう、滅茶苦茶だよ!
...ってサーバル達は!?」
ボチャン!!!
「あああああああああっ!!!!
落ちたぁあああああああっ!!!!
助けないと!!!」
キュルルは急いで、2人を助ける為に海に飛び込んだ。
海中に飛び込み潜った。水面から5、6mくらいかサーバル達は奇跡的にもすぐ見つかった。
2人を抱え急いで地上に顔を出そうとした。
「...!!」
何故か知らないが、海底に身体が引っ張られている。
このままじゃ息が続かない。
「あれ...、どうしたんですか?」
こんな危機的な状況で呑気に語りかける、
恐らくフレンズだろう。
「ああ、助けて欲しいんですね。
私が助けるなんて、壇之浦で入水した安徳天皇以来ですよ」
(自慢話はいいから早く...!!)
「はいはい」
「ハア...ハア...、死ぬかと思った...」
「赤ちゃん達も無事ですよ。後1分遅かったら
2人とも死んでましたよ」
「あ、ありがとうございます...。
あなたは...」
「シャチです。あの2人とは違いますから、
お礼は結構ですよ」
「た、助かったけど、かばんさん達は...」
「あ、あの船ですか?」
何故か全員顔がひきつっている様に見えた。
「ま、まずいっ!シャチさん、こっちに伏せて」
「えっ!?」
「「「ウゲェッ...!」」」
『コレ、酔イ止メノ薬ダヨ』
結局、ラッキービーストが持ってきた酔い止めの薬で3人の吐き気は収まった。
「もう飲んでも遅いんじゃないですか?」
絶望したような声でキュルルが言った。
「ありがとうございます、ラッキーさん...」
「ご褒美はこの薬でいいよ...」
「何で私まで気持ち悪くなったのかしら...」
バンドウイルカもカリフォルニアアシカも
疲労困憊と言った様子であった。
「センさん、某国の情報によると、例のプリウスの所有者は青髪の男の娘、チビッ子2人と共に逃走しているようです」
「無駄な足掻きを...。
我々は警察官ではありませんが、弁護を引き受けた以上相手を確実に骨の髄まで追い詰めなければいけません。絶対に尻尾を捕まえて、裁判に掛けるのです」
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