-79度 勇者のスエオ3

「よくわかっただな?

 おでは悪いオークじゃねぇべ。」


 まるでホイ〇スライムのような事を言うスエオ。

 全くの偶然なのだが、勇者(笑)は反応してしまう。


「……いや、まさかな?

 君!今すぐそのオークから離れるんだ!俺が必ず君を守ってみせる!!!」


 多少……いや、かなり勇者は自分とシチュエーションに酔っているようだ。

 オトワールは以前トイモエに好かれていたが、普通に美少女なのだ。

 ……あれ?トイエモだったっけ?イトモエだったっけ?忘れちゃった☆


「いや、こいつは本当に悪いオークじゃないんだ。

 一応俺の保護者でもあるから、乱暴な事は──」


「俺っ子だとおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 やたらと興奮する勇者(笑)

 興奮のあまり剣を抜き構える勇者(笑)

 スエオを斬る前に血管が切れるんじゃないかと心配だ!

 名前も知らない美少女を守るため、スエオの隙を伺う勇者(笑)


「いきなり剣を抜くとか危ねぇやつだべ。

 衛兵さんは近くにいないんだべか?」


 豚のくせに落ち着いたスエオ。

 実は料理中なので、あまり他に気を向けていないだけだったりもする。


(くっ……隙だらけにも見えるが、この余裕はなんだ!?

 ま、まさか俺にも見抜けないほどの強者だというのか!?)


 そのスエオの動じない姿に、逆に動けなくなる勇者(笑)

 闘志をたぎらせながらスエオを睨む勇者(笑)

 だんだんと麦粥がいい具合にとろけだした頃、いい匂いをさせているがまったく気にしない勇者(笑)

 勇者(笑)がそろそろゲシュタルト崩壊する頃合いである。


「いや、だからスエオは確かにオークだけど、悪いオークじゃないんだってば!

 いい加減その剣をしまってくれよ!っていうか俺の話を聞けよ!」


 守るつもりのオトワールの言葉さえも反応できず、スエオに集中する勇者(笑)

 その間にも煮えた麦粥をとりわけるスエオ。

 全く勇者(笑)の事は気にしていない。

 渡された麦粥をナチュラルに受け取り、スプーンを取り出すオトワール。

 実はオトワールも図太いのではないだろうか。


 そして麦粥を食べ始めるスエオとオトワール。

 勇者(笑)は完全に無視である。

 しかし、無駄に警戒する勇者(笑)は動けない。

 まさか剣を向けられながら普通に食事を始めるなどとは思っていなかった。

 勇者(笑)の頭の中では、斬りかかった途端にスプーンで剣を止められるイメージが浮かんでいた。

 ぶっちゃけただの考えすぎである。


「ふぅ、落ち着いたべ。」


 麦粥を完食し、麦粥を食べながら沸かしていたお湯でお茶を入れて飲むスエオ。

 完全に普通の食事風景である。

 しかし勇者(笑)は動けない。

 ライトノベルを読みすぎた勇者(笑)は、スエオを完全に強者としてみていた。


「いい加減こっちが敵意無いのはわかったんじゃないの?」


 真っ当なツッコミを入れるオトワールだが、勇者(笑)は脂汗を流しながら構えたままだった。


「そんなに戦いたいなら、おでの封印している混沌を倒してくれねぇべか?」


 引っ込みがつかない勇者(笑)に、スエオがゴミを押し付けるかのように思いついた事を言い放つ。


「……なんで久々の登場がこんな当て馬の相手なのよ。」


 イトエモあてうまではなく、勇者(笑)なのだが関係無いようだ。

 久々の、閑話で名前が決まったプロウレムの登場である。

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