-76度 第一印象のスエオ
「いや、どこからどう見ても不審者だけど、こいつは一応俺の保護者なんだ。」
突然現れたイケメン風の男に、ダメ元で説明してみるオトワール。
自分で言ってて説得力が無いし、そもそも自分達で不審者の自覚はあった。
「脅されて無理に言わされているんだね!
可哀そうに、こんなに可憐な少女の保護者をうさんくさいオッサンが出来るはずがない!
卑劣なクズめ!この俺様が退治してやる!」
予想より斜め上に人の話を信じない人だったが、正直いつものパターンである。
……いや、ちょっとトンデモ理論はいつもじゃないけど。
「いやあ……普段から疑われるおでも、ここまで断言されるのは初めてな気がするべ。」
イケメン風の男は剣を抜くと、四つん這いのままのスエオに突き付ける。
オトワールが上に乗ったままだが関係ないようだ。
「とりあえず危険だからその剣を収めてくれない?
俺を助けるとか言いながら巻き添えにするのが目的じゃないよね?」
男は聞いているのか聞いていないのか、剣を向けて構えたまま微動だにしない。
ゆっくりと後ずさるスエオとの距離は少しずつ開いていく。
そろそろ立ち上がる隙が作れるだろうか、どうやってオトワールに背中から降りてもらおうか、そうスエオが考えた頃、男はプルプルと震えだした。
「なぜそんなオッサンを庇うんだ!俺様が退治してやるって言ってるだろ!
この俺様のいう事が聞けないって事は、お前も悪人かっ!」
ところどころ裏返る叫び声をあげると、それと同時にオトワールに切りかかろうとする。
もはや意味不明である。この男は、俺が絶対正義マンだったようだ。
スエオは慌てて魔法を発動、とっさに男との間を氷の柱で塞ぐと四つん這いのまま飛び退いた。
「くっ!小癪なっ!
こんな氷柱など俺様の剣で切り伏せてくれるっ!」
一度氷柱に激突し、鼻血を流しながらも氷柱に剣を振るう男。
しかし、スエオの魔法で作られた氷柱は、そんじょそこらの剣で切れるようなヤワではない。
当然のように剣を弾かれると、尻餅をついてしまう男。
一瞬茫然としたかと思いきや、顔を真っ赤にして剣を振り上げ怒鳴り散らす。
「この俺様の剣が通用しないとはありえない!
何か卑怯な手を使ったんだろ!卑怯者め!正々堂々と勝負しろ!」
正直卑怯も糞も無いのだが、もはや全て自分の思い通りにならないと気が済まないようだ。
……物語特有の誇張したキャラだと思うだろ?リアルにもいるんだぜ?こんな奴。
そんな作者の遠い記憶は置いといて、スエオはそのまま氷柱で男を囲っていく。
全方位を高さ三メートル程まで補強し終わると、中に取り残された男は剣を振り回して叫び続けた。
がむしゃらに剣を振り回し、疲れ果てては休憩し、日が暮れて剣が折れるまで。
そのころスエオ達は目的地に到着していた。
ああ言うのは相手にしないのが一番である。
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