-73度 模倣のスエオ
「おでも今の魔法真似してみるっぺ!」
サイケンはスエオが何を言っているのか理解できなかった。
大きめの魔石を使い捨てにした自分の最強魔法を防いだだけではなく、魔石も無しに真似してみると言っているのだ。
「下の団地より白壁木樽、パンツを取れパンティーを取れ全ての布取れるウッヒョウ!ケツの嵐。
ワガママを飲み水に、エコノミー席を食らい育った白壁よ!駅の全てを軽視させん!
【エンドロールブリザード!】」
随分と詠唱も魔法名も改変されていたようだ。
と言うか意味不明だった。
そしてこの何故発動したのかもわからない魔法を最後に、サイケンの意識が途切れたのだった。
……リーダーっぽい子供がダイシンと言う名前だったり、ホビット種だから小さいけど大人で実際にこのチンピラ集団のボスとか色々あった設定が出てくるまでもなく。
※※※※※
氷漬けのチンピラたちを放置し、オトワールとスエオは宿屋に向かって歩いていた。
よっぽど怖かったのか、安心して腰が抜けたのか、オトワールはスエオの右肩に座ってスエオの頭を抱え込むようにしている。
街の人々がスエオを見る目も、不審者から娘に甘えられる父親といった風に変わっていた。
……スエオとオトワールの歳はそんなに差が無いのに。
「ケガも何も無かったんだから良かったべ。
早いところ宿屋に行って、ゆっくり休んだら次の町に行くだよ。」
オトワールの心の傷を心配したスエオは、街での滞在を切り上げて目的地へ急ぐ事にした。
元々行先が温泉というだけで特に目標の無い旅である。
居心地が悪い街は直ぐに旅立ってしまえばいいのだ。
決してネタが思いつかないから場面を移動させたいのではない。決して。
そして二人は合図がある前にスエオが見つけていた宿屋地区へとやって来た。
ひとまず一番手前の宿屋へと入ると、中にいたおばちゃんが温かく迎えてくれた。
通常であれば歩いているだけで不審者として通報されてもおかしくないスエオの見た目だが、べったりと甘えている(ように見える)オトワールの存在が中和していた。
「一泊夕食付で銀貨三枚、二人部屋なら二人で半金貨一枚でいいよ。」
これが高いのか安いのかスエオには判断できなかったが、昔食べた麦の満腹スープ七杯半である。
果たしてボンブの事を覚えている読者はいるのだろうか。
作者は慌てて過去の話を探して名前を調べていた。
ちなみにスエオの記憶には満腹スープしか残っていない。
スエオが薄情なのか、脳の容量が少ないのかは誰にもわからないのだった。
「じゃあ二人部屋でお願いします。」
スエオの思考が明後日の方向へ逸れているのを察したのか、オトワールが話を進めていた。
おばちゃんから鍵らしき木の板を受け取ると、部屋の場所を聞いてスエオをあやつるオトワール。
四つん這いのスエオに乗っていた時から、スエオの操縦方法はマスターしたらしい。
今では頭の毛を引っ張るだけで自由に乗りこなせるようになっていたオトワールだった。
そんな姿を見た他の客が、不審者を見る目でヒソヒソと内緒話をしていたのはしょうがないのではなかろうか。
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