-74度 教師のスエオ
スエオとオトワールは宿で一泊すると、沢山あるトパーズを一つだけ換金して街を出た。
一つだけしか換金していないのは、トパーズが全て同じ見た目だからである。
「あんまり別行動はしねえ方がいいっぺかなぁ……」
スエオは街道を歩きながら呟いた。
オトワールには戦闘能力が無いという事を思い知ったからだ。
しかし、考えていたのはスエオだけではなくオトワールも一緒だった。
「しばらくはしょうがないけど、俺に魔法を教えてくれよ。
力とか剣は訓練に時間がかかりそうだけど、魔法なら使えるようにさえなれば時間を稼げるんじゃないかって思うんだ。」
オトワールの考えは正直甘かった。
魔法を全く使えない人間が、魔力を感じとって魔法を使えるようになるには、普通は年単位の修行が必要なのである。
それこそ走り込みでもして逃げ足を鍛える方がよっぽどすぐ役に立つのではないだろうか。
「そだな、魔法ならすぐ使えるようになるから教えるべ。」
スエオの考えも普通じゃ無かった。
次の町へ向かうには徒歩で四日ほどかかるらしい。
途中でスエオライドスタイルになったとはいえ、馬車とほぼ同じ速度なので二日かかる。
いや、さらっと言ったけど馬車と同じ速度で走る四つん這いのスエオとか奇妙極まりないという現実からは全力で逃避中である。
とにかく途中の野営ポイントで一泊する事にした二人は、テントや夕食の準備を終えた後、魔法の特訓を始める事にした。
「まずは魔力を集める所からだべ。
一番扱いやすくて強力な月の魔力を集めるといいべ。
昼間は太陽の魔力、月の見えない夜は闇の魔力、滝のそばだと水の魔力も多いべ。
いろんな魔力を取り込めるようになれば、いつでも魔法が使えるようになるべよ。」
-2度、魔法使いのスエオを覚えているだろうか。
魔法を使うのに障害となる唯一のポイントは、目に見えない力を具体的な魔法へと変換するイメージ力である。
漫画やアニメ、ゲームなど存在しないこの世界で、スエオが魔法を軽々使いこなせるのはひとえに
月の魔力とか闇の魔力とかそんな区別はぶっちゃけ全くない。
しかし、スエオの常識外れた魔法を見ているオトワールは丸ごと信じてしまった。
そして、それは目に見えない力を月の光や太陽の光、暗闇や水滴として認知しやすい形にしていた。
「ファイヤーボール!」
結果、オトワールは一日で魔法が使えるようになった。
野営ポイントは他にも利用者がいたが、まさかオトワールが魔法の特訓一日目だとは思っていない。
今作者が十分近く過去の話を探した結果、オトワールの年齢は十二歳だった。
もはやプロットなんてデータの藻屑、記憶力もこれだけ更新が開けば頼りにならない。
メタネタは程々にしておいて、最近はオトワールの栄養状況が改善されたため、以前のように年齢より幼くは見えないようになってきた。
近くの野営している人達はファイヤーボールが出て喜ぶオトワールを見て、十歳ぐらいから魔法の練習を始めた少女がついに魔法を使えるようになったのだろうとか思っていた。
……魔法訓練初日の話である。
この逸話は後に【賢者オトワール伝記】において、嘘だとか盛りすぎだとか言われる事に……
って言うかそんな本出ねぇよ。
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