-66度 再出発のスエオ
ダイアモンド喪失事件から数日、結局スエオは何回か宝石研磨の魔法を使ってみた。
結果は全て同じである。
そもそもゴブリンすらワイルドボアに変えてしまう解体魔法。
これはスエオが最初に解体したのがワイルドボアだったからだ。
最初に研磨したのがトパーズだったため、何を磨いてもトパーズになるようになってしまった。
売るに売れないトパーズが貯まりつつあり、しかし他の原石をそのまま売るぐらいなら磨いた方が高く売れるはずなのだ。
オトワールはそろそろこの村を離れるべきだろうかと思っていた。
「めずらしいべな。今日はおでについてくるだか?」
荷物をまとめ、武器のチェックをするスエオ。
いつものように狩りと原石拾いをしようと思っていたところに、オトワールが今日はついて行くと言い出したのだ。
「うん、まあちょっと話したい事もあるし。
そんな危ないところには行かないんだろ?」
村を出る相談をしなければならないのだが、人の良すぎる老夫婦のそばでは何となく話しにくい。
川原あたりで原石拾いでも手伝いながら、じっくり打合せをするべきかなと思ったのだ。
「まあいいべ。じゃあ今日は川原から行って、午後に狩りに行くことにするべよ。」
準備を終えるとオトワールを伴い、スエオは川をさかのぼるルートで上流へと向かって行った。
「ひっく、ひっく。えぐぅ……」
スエオとオトワールがそろそろこの辺りで原石を拾おうかと思ったぐらいで、若干あざとい女の子の鳴き声が聞こえてきた。
声のする方を探すようにそのまま進むと、川原とはいえ森の中だというのに可愛らしい服を着た女の子がいた。
「お嬢ちゃん、どうしたんだべ「いやあああああああああああ!!変質者あああああああああ!!!」」
スエオが声をかけ、少女が見上げた瞬間大絶叫が響き渡る。
いくら百人中百人がうさん臭いと思う顔とは言え、さすがにショックを受けるスエオ。
慌ててオトワールがなだめ、うさん臭いけど悪人じゃないよとフォローになっていないフォローを繰り返す。
スエオがうさん臭いと二十回ほど言われたころ、ようやく少女は落ち着いたようだ。
地味にオトワールも酷い気がする。
「ご、ごめんなさい。」
しゃがみこんだまま、上目遣いでスエオに謝る少女。
ふわふわのブロンドヘアーで小さい顔の割に大きな瞳、庇護欲をそそるような華奢な体つき。
その姿は確かにかわいらしいものであり、女性に慣れていない男であればドギマギして許してしまうのかもしれない。
しかし、ヘタレで女性から逃げ出すようなスエオにとってはただの媚びる少女である。
「まあどうでもいいべ。
ところで何でこんなとこで泣いてたんだべか?」
疑問を素直に伝えるスエオに、少しばかり言いにくそうな顔をする少女。
「私が可愛いからって、他の子に置いて行かれたんです……」
この子の方がうさん臭い。
スエオとオトワールは声をかけなければ良かったかも知れない、そう感じ始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます