-65度 ほうしょくのスエオ2
「それじゃあ早速やってみるべ。」
そう言いながらスエオが取り出したのはトパーズの原石。
宝石店で購入したものではなく、村の近くの川で拾った物である。
たまに狩りの休憩で川に行くと、水晶やトパーズの原石が発見されるのだ。
もちろん小さな物しか無いが、魔物がいるこの世界では拾う人も少なく、スエオの貴重な収入源の一つとなっている。
「磨くにしても、形とかで価値が変わっちゃうんじゃないのか?」
オトワールの言うことももっともである。
綺麗な丸や楕円にする技術があるからこそ、原石と宝石の価値に差が生まれるのだ。
そう思ったスエオは、宝石店で見かけた一番高いトパーズをイメージした。
原石を握りしめ、魔法を使うスエオ。
その手を開いたとき、そこには立派なトパーズがあった。
「よし、綺麗に出来たべ。
これなら「ちょっとまったああああ!!」」
思わずスエオの言葉をぶった切り、トパーズの乗ったスエオの手を両手で掴むオトワール。
その目は驚愕に開かれており、よく観察すると手も震えていた。
「何で小指の爪の半分くらいしか無かった原石が、親指より大きい宝石になってんだよ!」
大声で叫んだ後、とっさに自分の口を塞いだ。
この力がバレてしまえば、スエオは宝石肥大マシーンとして監禁され、自分は人質として囚われてしまうかも知れない。
それくらい衝撃的な魔法だった。
「でっかくなったら高く売れるベ。
良いことでねえべか?腹一杯飯が食えるべ。」
スエオは事の重大さを理解していなかった。
豚に真珠ならぬ豚に宝石である。
「と、とにかくその魔法を使うのはダメだ!
第一それ簡単には宝石店に売れなくなるだろ!」
宝石は宝石店で売るから高いのである。
オークの姿は当たり前だが、魔道具で人になってもうさん臭いオッサン代表みたいなスエオである。
これでは偽物と思われ買ってもらえないだろう。
ちょっと最近血色が良くなってきたくらいのオトワールでも同じ結末になるのは目に見えていた。
「それじゃあしょうがねえべ。
この宝石は別の街で売ることにするだよ。」
魔法自体は成功したのに、結局多用できない事に少ししょんぼりするスエオ。
そんなスエオを気にすることなく、オトワールは宝石袋から一粒のダイアモンドを取り出した。
これは宝石店で購入したもので、既に磨かれており、荷物にならないように金貨を宝石に変えた時の物だ。
「な、なあ、最後にこれでもう一回だけやってみてくれよ。」
既に欲に目が曇り始めたオトワールの迫力に負け、スエオはダイアモンドを握りしめた。
そして、魔法を使い手を開くとそこには魔法で変化した宝石が乗っていた。
……親指大のトパーズが。
世の中そんなに甘くなかった。
ちなみにこの村の周辺では、親指大のトパーズよりダイアモンドの方が高かったりする。
一気に欲望から冷めたオトワールは、全てを無かったことにして寝ることにした。
スエオは深く考えずに寝た。
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