-52度 たいひのスエオ

「どうすっぺかなあ、これ。」


 みんなのお腹が塩焼きでいっぱいになった頃、 スエオはミンチ状のタイ児の処理に困っていた。

 凍った方は後で溶けた頃に焼いて食べるか、開いて干せば保存食として活用できそうだ。

 しかしミンチ状の方は内臓や鉄片が混ざっており、とてもじゃないが食用には出来なさそうだ。


「とりあえず解体魔法を使ってみ――」


 ミンチから鉄片や内臓が取り除かれ、そこに残る

 慌てて隠すが、食い意地の張ったスラムの子供たちに見つけられる。


「おっちゃんおっちゃん!

 この肉何?食っていいの?って言うか食いたい食わせろー!」


 魚に飽きた子供たちには、その肉の存在感は決して無視できなかった。

 ある程度満腹でなければ、子供たちに襲われていたかもしれない。


「この肉は(元から)味がついてるから、このまま焼いて分けて食べるといいべ。」


「わかった!(今味付けしたから)味付きなんだね、ありがとう!」


「ん?」

「え?」


 未だにスエオは味の秘密に気付いていなかった。


「おっちゃん、今これを肉と毛皮に変え──」


 スエオは気づいていなかったが、ずっとそばにいたオトワールには見られていたらしい。

 解体魔法でワイルドボアの肉と毛皮を作り出す様子を見られていたようだ。


「しーっ!だめだべ、これはおでとオトワールの秘密だべよ。」


 少女の口をふさいで秘密だとか言い出すオークの姿は、もはや見た目だけで犯罪である。

 スエオにその気はなくとも、やはりオークである。

 大人も含めた周囲の人たちに一瞬の緊張が走ったが、すぐさま気づいて手を離したスエオと、フォローに入ったオトワールのおかげで衛兵や兵士おまわりさんを呼ぶ必要は無かったようである。

 というか取り締まられる側のスラムの住人には頼れない。


「し、しょうがねえから、臭いだす前に乾燥させるべ。」


 気を取り直してミンチ状のタイ児に向き直ったスエオ。

 今度は子供たちに近付かないように言った後、再び魔法で竜巻をおこす。

 ついでに右手の封印を弱め、風を熱風に変える。

 混ざった鉄片のせいで乾きながらも砕けていくタイ児。

 最終的に粉になるくらいまで続けた頃、王都の方から兵士が大勢やってきた。


「貴様!何をまき散らしている!!

 そこを動くな!」


 どうやら粉になったタイ児が風でまき散らされ、王都の方まで届いていたようである。

 急いで魔法を止めると、慌てて逃げ出すスエオたち。

 子供たちは金になりそうな金属片の回収を忘れない。

 ついでに凍ったタイ児もポケットや両手であるだけ持っていかれてゆく。

 スエオは子供に誘導され、壁の亀裂から王都の中へと退するのだった。



 この時撒かれた魚粉が作物に影響を与え、魚人の呪いや豚の祝福と呼ばれたそうな。

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