-53度 悩むスエオ
スラム街へ戻ってきたスエオと子供たち。
子供たちはタイ児を開きにして干している作業中である。
既に五人ほどの大人が奪おうとしているところをスエオに懲らしめられていた。
「これからどうすっぺかなあ……」
今後の予定を考えるスエオ。
まるで行き当たりばったりで動いているようだが、あくまでこれはクールになるための旅である。
しかし、二度目の封印解除がスエオを悩ませていた。
封印の強化方法を探すか、クールを求め続けるか。
クールになっても、世界が滅んでいたら意味がないのである。
「おっさん何を悩んでるんだ?」
ずっとそばにいるオトワール。
逃げる時も今もずっとそばにおり、魚を干す手伝いをしなくていいのかと尋ねたところ、【スエオ係】という仕事中らしい。
スエオには意味が分からなかったが、とりあえず相手してくれるのであれば話をしてみようと思うスエオであった。
「おではくぅるになるために旅をしてるんだべ。
とりあえず王都なら、見本になるくぅるな人も多いだろうと思っただけんども、貴族はほとんどダサい腐ったのしかいなかったべ。」
いきなりの爆弾発言である。
スエオにとって、魚人が攻めてくる前に会った人は人ではない。
クールでもなければ優しくもなく、ただ嫌な事をしてくるだけの存在だった。
しかし、人間社会に詳しくないスエオは堂々とけなしているが、衛兵にでも聞かれれば即逮捕である。
オトワールは慌ててスエオの口をふさごうとすると、勢い余ってスエオの鼻にみごとなツッパリをヒットさせた。
「痛えだーよ……ここ地味に痛いんだべよ。」
涙目になるスエオに対し、申し訳なさそうではあるものの決して誤らないオトワール。
「しょうがないじゃん、下手に貴族を侮辱すると拷問されて殺されるんだ。」
その発言に、周囲の子供の数人の顔が暗くなる。
きっと貴族がらみで親を殺されたりしてしまったのかもしれない。
スエオは、あえて自重しなかった。
「そんな事だから腐ってるっていうんだべ。
おではオークで人の法律に守られてないから、人の法律を守る必要なんてないべ。
人に迷惑をかけず、弱きを助け、気に食わない奴はぶっ飛ばすのが一番だべ!
……っておでの師匠が言ってたべ。
おでを戦争の道具にしようとした連中なんて道具扱いで十分だべ。」
あくまで強気のスエオである。
正直、木札をくれた伯爵家の護衛達には最低限の筋は通したつもりである。
魚人と戦いはしたが、守りたかったのは目の前の子供たちであり、あんな扱いをしてきた貴族を守る必要などないのだ。
「いざとなったら王城ごと吹っ飛ばすべ。
もう一回ぐらいなら【世界を食らう混沌】も手伝ってくれるんじゃねえべか?」
既に封印の意思がゆるゆるである。
元々は封印を強化するか、クールを目指すかで悩んでいたはずだったのに。
「ああ、それなら元の通りクールを目指す事にすんべ。
いや、意外と人と話すだけで解決するもんだべなあ……。」
王城ごと吹き飛ばすとか言い出したオークに少々やばいものを感じつつ、どうやら悩みが解決したようなスエオに苦笑いしか返せないオトワールであった。
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