-33度 行列のスエオ
街道で野宿したスエオ。
当たり前のようにここにも消えない炎を設置したかと思うと、今度はきちんと消していた。
前の炎は気にしていなかったが、さすがに森が近くにあると火の始末には気を遣うようだ。
「一声くらいかけた方が良かっただべか……?」
村を出発して一晩、少し冷静になったスエオはちょっとだけ後悔していた。
村を出るときにギアテに挨拶をしていない、できなかった。
どの面下げて逃げ出したスエオが何事もなかったかのように再会できるというのだろうか。いや、出来まい。
「まあいいべ、先へ進むべ前向きにだべ!」
そんな後ろ髪をひかれつつ、スエオは次の町を目指す。
スエオは知らないが次の町は街どころか都、王都である。
今まで訪れた村と同じくらいの規模を予想していたスエオが、口を開けたまましばらく固まるのはもう半日後の事である。
「……いつになったら入れるんだべ?」
スエオが口を開けたまましばし固まってからさらに半日。
いまだにスエオは王都入りの行列に並んでいた。
固まったまま横を3人ほど通り過ぎてしまったが、そのすぐ後ろに並んだはずなのに。
もうすぐ日が落ちそうなのだが、まだ列は半分ぐらいしか進んでいない。
このペースだと、続けたとしても街に入れるのは真夜中だ。
「あで?なんか旗振ってねえべか?」
行列の先で誰かが白い旗を振っているのが見えた。
夕日で赤く染まっているため、正確な色はわからないがとにかく白っぽい色だ。
「お?あんたこの距離で旗が見えんのか、顔は胡散臭いけど目はいいんだな。」
答えたのは前に並んでいた男性。
後ろの人はそれを聞いたのか、後ろに『旗が出たぞー!』と伝えていた。
「あの旗に何か意味でもあるべか?」
疑問に思ったスエオが前の男に聞いてみる。
「あれは、今日はもう街に入る検問終了って合図だよ。
今夜はこのまま道の横で野宿って訳だ。
並んだままじゃないのはいつでも入れる貴族様のために道を空けておけって事らしい。
俺と後ろのやつの顔、しっかり覚えておけよ?」
つまりこのまま街道脇で野宿するという事だ。
顔を覚えておけと言うのは割り込み防止のためなのだが、スエオは何となく前後の人と仲良くしておくといいと受け取った。
「街が見えてるのに夜営はなんだか複雑な気分だべ……」
スエオはそうつぶやきながら魔法で調理設備を作り出す。
調理台にコンロ、既に火はついている。
ワイルドボアの肉を切って焼くと、あたりには良い匂いが広がっていく。
「そろそろ良い具合に焼けたべ。
……おめえら何してるだべか?」
肉が焼き上がる頃、周囲には近くで並んでいた人が集まっていた。
手には旅で食べる保存食のような物が見える。
干し肉と乾パンで腹を膨らませようとしたら、肉の焼けるいい匂いがするのだ。
「な、なあ、ちょっとだけそれを分けてくれねえか?」
こうなるのは当たり前だった。
しかし食い意地のはったスエオは代償を求めた。
「じゃあそのパンと干し肉を分けてくれれば良いべ。」
その瞬間目の前から消える焼きたての肉。
そして積まれる乾パンと干し肉。
「……おでの分まで無くなっちまったべ…」
結局スエオは土鍋を作り、乾パンと干し肉を放り込んだ。
ついでに魔法で味を調えるといった暴挙を行った。
そして再び人が集まり、何度も料理をするハメになったスエオであった。
スエオは まほうりょうりを おぼえた
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