-28度 混浴のスエオ
「うおっ!?なんでこんなところにオークが普通にいるんだよ!」
いつもの朝、例によって入浴料替わりの朝ごはんを食べた後、温泉の掃除をしようと浴室内に入ると一人の見慣れぬ男が入っていた。
「おめえ見ない顔だな。おではここの管理をしてるオークのスエオだべ。」
村人との交流で対人スキルが向上したスエオは、最初に自己紹介をする。
「いやいやいやいや、オークが温泉管理とかおかしくね?
のぞき穴とか絶対作ってるだろコイツ。」
失礼な男であった。
普通のオークだったら、のぞくぐらいなら襲い掛かっているし、スエオにそんな度胸なんて微塵も無いのに。
「お、おではそんな事しないだーよ。
くぅるな男はのぞきなんてしないだーよ。」
スエオが弁明するが、男は半信半疑のようだ。
主にクールのくだりを信じていないようで、何やら魔法を使う気配がする。
攻撃魔法が来るのかととっさに身構えたスエオだが、スエオの体が青く光った以外に特に変化は無かった。
「……何をしたんだべ?これ体に害はないべか?」
しかし、男はスエオのそんな反応に驚いたように目を見開いている。
「青……だと!?
す、済まなかった。今の魔法は敵を見分ける魔法で、悪意がある相手だと程度によって赤く光るんだ。
ちょっと悪意のあるオレンジと普通の黄色が見分けにくいのが難点なんだが、まさか真っ青に光るなんて……」
どうやら青は善人の証らしい。
オークであるスエオが青に光ったのが驚きだったようだ。
と言うかクールで善人というのは両立できるのだろうか。
そこを混ぜるとツンデレである。混ぜるな危険。
「まあ誤解が解けたんなら問題ないべ。
おめえが入ってると掃除出来ないから、ついでにおでも風呂入ってから掃除する事にするべ。」
そう言って服を脱ぎ、体を洗い始めるスエオ。
温泉の前はかけ湯と言われているが、入る前にちゃんと体を洗う真面目なスエオである。
イメージだけで汚いと思われている事を自覚している切ない豚だった。
「……いや、普通に共存するゴブリンとも会った事はあるけどさ、オークは初めてだな。」
男がそうつぶやくが、スエオにとってはそっちの方が驚きであった。
ゴブリンは総じて知性が低く、最上位種のキングゴブリンでも人語を理解する事は出来ない。
この男はどこから来たんだろうか。
「ゴブリンと一緒に暮らすだか!?
どうやって話したりするんだべ?どこにそんな場所があるんだべか?」
体を洗い終え、温泉に入ると男の隣に座るスエオ。
男はちょっと距離を離すと、スエオを警戒するように答えた。
「いや、ちょっと普通じゃ行けないくらい遠い場所なんだけどな。
……オークと混浴って方がよっぽど珍しいんだが。」
異種間混浴に戸惑う男。
ここは女の子との混浴じゃないのかとかつぶやいているが、残念、性描写はこの小説に存在しません。
タイトルに混浴のスエオと書いてあっても、人とオークの混浴でしたと言うオチである。
「おで以外のオークはエロい事しか考えてねえべ。
おめえ珍しい体験をしてるっぺよ。」
スエオのその言葉に、そっと尻に手を当てて距離を取る男であった。
とことんオークという種族には信用がないようだ。
※BL展開は絶対絶対ありません。前振りでもありません。
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