-22度 戦いのスエオ
平和な村に、騎士姿の男がやってきた。
「邪悪なオークがいる村はここか!」
またこのパターンである。
超絶猫かぶり下品毒舌思い込み残念騒音公害暴力見捨てられ腐女騎士と違う点は、やってきた男が既にその剣を抜いている所だろうか。
……余計危ない人物である事に違いない。
とっくに村人たちは逃げ出しており、自警団は遠巻きに囲んでいる。
ギアテが遅ればせながら駆けつけると、男は既に暴れる寸前だった。
「オークにたぶらかされてソフィアを投獄していると聞いたぞ!
我が将来の妻に何という仕打ちを!」
来たのは似た物婚約者だったようだ。
「ソフィアとやらが名乗りもしない女騎士であれば、村人を殺そうとしたから牢屋に入れている。
騎士団の上層部からの許可も貰っているはずだ。」
ギアテが警戒を続けながら男へと伝えるが、男は聞く耳も持たず剣を振り回す。
「うるさい!この正義の騎士たるウロー様が間違っているというのか!
とっとと彼女を解放して、オークの居場所を答えろ!」
まるでただ暴れているように見えるが、
間違いなくソフィアよりも強いと思われた。
「……オークは南の森で狩りの途中だ!
女騎士も連れ帰ってもらって構わないから、とっとと村から出てく行ってくれ!」
苦虫を噛み潰したような顔で答えるギアテ。
ここでそのまま暴れられるわけにはいかないのだ。
スエオの強さなら何とかしてくれるだろうと儚い期待を込めて。
こんな繰り返しのワンパターンでやられるスエオではないはずだからと。
「なんか右腕がすっごくうずくけんど、ちっとも敵の気配はしねえだなあ……」
森の中、いつにもましてうずく右腕に周囲の警戒をするスエオ。
嫌な予感がしたので、警戒しながらも村に帰る事にした。
「まさか村の方に厄介なのが来てたりはしねえだべか……」
旅に出るとかいう話はどうなったのだろうか。
もはや完全に村の一員として心配しているスエオである。
しかしツンデレ混沌の能力は魔物だけではなく、敵全般に反応するようだ。
世界をくらう混沌とはいったい何だったのか。
スエオが村へと進んでいると、右腕のうずきが徐々に強くなる。
村の入り口が見えるところまで来ると、超絶猫かぶり下品毒舌思い込み残念騒音公害暴力見捨てられ腐女騎士バカップルがいた。
右腕はカップルの男の方に強く反応しており、一筋縄ではいかないようだ。
女騎士が牢を出ていると言うことは、ギアテはやられてしまったのだろうか。
徐々に焦りだしたスエオは、我慢できずに二人の前に飛び出した。
「おめえ、そこの女騎士は罪人だべ!
逃がしたってことは、おめえも悪人だべか!?」
男の方は飛びだしてきたスエオを見てニヤリと笑うと剣を抜いた。
「悪人?それはキサマの事だろうがあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
想像以上の剣速に、慌ててバックステップするスエオ。
そのまま魔法を放とうとするが、すぐに思いとどまる。
男の後ろには村があるからだ。
このまま魔法を放つと、村に被害を与えてしまう。
「くっくっく……どうした?魔法を使おうとしたのか?
下等な魔物ごときに使えるわけ無いだろうがぁ!」
男は勘違いしていたが、スエオが魔法を使えないのは同じだった。
クールを目指して旅を始めたはずが、そもそも人と仲良くなることすら難しかった。
そんな中、受け入れてくれただけで無く、仲良くしてくれた村なのだ。
決して傷つけたくは無かった。
「じゃあこっちを使うべ。」
スエオが右腕を振り上げると、男の足元から次々と土のトゲが飛び出す。
別に魔法は飛ばさなくても攻撃出来るのである。
「なっ!?
オークマジシャンだったのか!?」
慌てて必死に回避する男に対し、距離を保つように移動しながら土魔法を放ち続ける。
そして、頭の悪いスエオには珍しく作戦が成功した。
「この位置なら魔法ぶっ放し放題だべ!」
そう。円を描くように周りながら攻撃した結果、スエオは村の入り口側に立っていた。
そしてその右手を男に向けて、魔力を込めた瞬間。
スエオは、最初から村の入口そばから動かなかった女騎士に、右腕を切り飛ばされた。
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