-18度 勝利のスエオ
スエオが村の暮らしに慣れた頃。
そろそろ
それはやって来た。
「失礼、ここに村人に紛れ込もうとしているオークがいると聞いたのだが。」
そう、王都から女騎士がやって来たのだ。
村の人はスエオを満腹スープの屋台のマスコット的な何かと思い始めた頃だったのだが、外から来る商人にとっては魔物は魔物だった。
どっちにしろ、クールでない事だけは確かである。
「そう言えばスエオってオークだったな。
あんなにウブなオークもいねえなあ。」
そう言って笑う村人達。
スエオの一端が垣間見える、ほのぼのとした光景である。
しかし、女騎士は焦っていた。
(これは……洗脳されているのか!?)
勘違いである。
そもそも、この女騎士は珍しい毛皮の調査が本来の任務なのだ。
人と交流するオークが毛皮を狩ってくると報告が上がっており、オークの人(?)柄もついでに確認してこいと言われただけなのに。
女騎士の脳内では完全にスエオが凶悪な魔物になっていた。
類は友を呼ぶ、スエオと同じく残念キャラばかり集まっては混沌と化すのでは無いだろうか。
右手の混沌はつい最近ツンデレ認定されたばかりである。
「くっ……これ以上洗脳される前に殺せと言うのか!」
こんな物騒な
もちろん殺されるのは女騎士でもスエオでもなく、無実の村人である。
おもむろに剣に手を伸ばす女騎士に、村人は青ざめて逃げ出す。
「この女マジやべえ!やべえマジやべえ!」
スエオ相手に鍛えた警戒心は無駄では無かったようだ。
逃げ惑う村人と、取り押さえようとする傭兵や狩人。
騎士相手に攻撃する訳にもいかず、遠巻きに牽制するだけであった。
「あんれ?みんな何やってんだべ。」
タイミングが良いのか悪いのか。
「キサマが噂のオークか!
洗脳を解けええええええ!!!」
即座にスエオにターゲットをうつし、上段から斬りかかる女騎士。
騎士と言ってもフル装備の全身鎧ではなく、調査や旅用の軽鎧であり、素早さやはそれなり。
かつ鍛えられた剣術の腕前は、普通のオークくらいなら歯牙にもかけないレベルであった。
対するスエオは、妄想だけで生きているような生物であり、実は近接戦闘技術はそこまで優れていない。
しかし、奇跡はおこるから奇跡なのだ。
(お、これはイメージトレーニングでやった攻撃だべ!)
スエオは右の手のひらで剣を横に逸らすと、そのまま左手で掌底を女騎士のアゴにぶちかます。
脳内で何度も繰り返した格好いい流れるような反撃は、スエオの魔法で強化された筋力と相まって一撃で女騎士を昏倒させた。
こんな物騒な予習が出来るチャ○ンジなんて存在しない。
赤○ン先生もビックリである。
「すげえ!スエオよくやった!」
「スエオって強かったんだな!」
「騎士様を一撃だぜ!一撃!!」
村人からの歓声を浴びるスエオ。
やってて良かった
「ふっ……おでにとっては朝飯前だべ。」
手で口元を隠すような、気どったポーズで格好つけるスエオ。
にやける口元を隠す効果もある、スエオの考えたくぅるなポーズだ。
「女性を昏倒させるのが朝飯前だなんて。」
「ずいぶん慣れた動きだったけど、いつもやってるのかしら。」
「やだ、アタス狙われたら困るべ。」
……なぜか女性人気は逆に下がっているスエオであった。
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