-17度 肉屋のスエオ
「たでぇま!今日も狩ってこれただーよ。」
狩人ギルドに帰るなり、買取カウンターに毛皮を置くスエオ。
スエオが村に来てから二十日ぐらい、三日に二回は獲物を持ち帰るようになっていた。
「おう、またワイルドボアの亜種じゃな。
もうそろそろ、そいつが新種認定されてもいい気がするんじゃがのう。」
今ではもう、スエオが持ち込む毛皮はオークションにかけられていない。
今の頻度で手に入るのであれば金貨五枚、という形で落ち着いた。
既に出荷された十枚が一律で同じ品質、同じサイズで、もはや工業製品に近い扱いだ。
状態保存の性質が極端に高く、皮をなめす事すら出来なかったが、特に脂も残っていなければ腐りもしないので、そのまま使われていた。
「お……おでにしか見つけられないからダメなんだべ?」
何しろスエオが作り替えた毛皮と肉である。
元がフォレストリザードだったり、最近ではゴブリンすらワイルドボアとして売っていたスエオは、ごまかしがバレやしないかとひやひやしていた。
「なんで他の奴らには見つからないんじゃろうなあ……」
残念そうにつぶやく爺さんから毛皮の代金をもらうと、スエオはそそくさと狩人ギルドを出て、屋台のある方へと向かった。
村の中にぽつぽつあっただけの屋台も、最近は行列が出来るようになっている。
そこにスエオが近づくと、行列の人々は道をあけてスエオを通した。
「今日も持ってきただーよ。」
決してスエオが嫌われて避けられた訳ではない。
毛皮と一緒に取れる肉、これをスエオはボンブの所に持ち込んでいるのだ。
そう、スエオの母親秘伝の味付けがされた肉である。
代金として、満腹スープを十杯食べるところまでが最近の習慣だ。
「今日は狩ってこれたんですね。売り切れてたので助かりました。」
スエオの狩ってくる肉の恩恵でがっつり稼いでいるのが、満腹スープのボンブである。
狩人ギルドは毛皮の価値が暴落したため、普通の素材買取より少しマシな程度だ。
スエオに満腹スープを朝晩十杯食べさせるだけで、肉を一頭分もらえる事になっており、肉が無いときはちゃんとお金を払っていく。
その肉を焼くだけで合計で金貨二枚になるので、ボンブとしてはウハウハである。
「スエオさんのおかげで、近いうちにお店を借りるお金がたまりそうなんですよ。」
次々と、まるでわんこそばのように満腹スープを食べるスエオに、ボンブは料理を提供しながら話しかけた。
都市部の人間が十日間生活するのに使うお金が、おおよそ金貨二~三枚だ。
しかしボンブの屋台の売り上げは、最近では一日に金貨三枚半に届く勢いだ。
材料代が半分近くかかっていても、あっという間に資金が溜まっていったのだった。
みんなが病みつきになる肉の味に、もはやボンブの屋台で行列は途切れない。
朝と夕方にはスエオ専用席が設けられ、周りの人もそれを認めるようになっていた。
スエオがこの肉を持ち込んでいる事、スエオ以外からは手に入らない事を知っているのだ。
そう、スエオの存在を徐々に村人が受け入れ始めていた。
「
専用席が認められているのは、この飛び散る食べかすも原因かもしれない。
少なくともクールではない事は確かである。
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