第5話 本人は回りくどいのが嫌なのです




 大人しくなった(静かにさせた、の方が正しいのかもしれない)舞世をそのままに、再び走り始めた車が進むこと、幾しばらく。




 時刻はさらに進み、夜はさらに深まる。道路を走る車の数も目に見えて少なくなり、街灯やらヘッドライトに照らされる建物は目に見えて大きく高そうなものばかりになっていた。


 そこは、いわゆる高所得者と呼ばれる人たちが住まう、高級住宅街というやつなのだろう。


 どの家も下手なアパートよりも広い敷地面積を有しており、三階建て、四階建ての建物ばかりであった。よく見れば、ガードマンらしき人が立っている家もある。


 そんな建物が立ち並ぶ合間に伸びる道路を、一台の高級車が走ってゆく。その速度は緩やかで、走行音の静けさも相まって、夜の闇に紛れて息を潜めているかのようであった。



 そして、その車が止まったのは、大きな門が目立つ豪邸の前であった。



 豪邸は、紛うことなく豪邸であった。車のガラス越しに見える限りでは、敷地と道路を隔てる壁の端が見えない。からからと開かれた門を通って中に入れば、大きな大きな庭が広がっていた。


 ……いや、それはもはや庭と呼んで良いのだろうか。通り過ぎていく庭を横目で見やりながら、伊都は思う。


 庭とはいっても、中にはアスファルトで固められた道路が通されている。目に見える緑の全てに、人の手が入っている。等間隔で取り付けられた外灯のおかげで、夜でもそれがよく分かった。


 付け加えるなら、その外灯ですら、道路に取り付けられているような代物ではない。一つ一つが伊都の記憶にはない造形をしており、全てがオーダーメイドであるのが窺い知れた。



 ……何と豪胆な金の使い様かと、伊都は呆れた。



 いや、まあ、他所様のやることなのだから、自身が口出しするような事ではないと、伊都も分かってはいる。だが、世間知らずであることは自覚していたが、世の中にはこのような世界があるのかと目を白黒させる他、出来ない。



(もしや……相当な資産家なのでは?)



 想定していたよりも数十倍以上は金持ちであることを察し始めていた伊都は、ただただ呆然とガラス越しの光景に呆け……家宅となる住宅を目にした時もう、言葉が思いつかなかった。


 一言でいえば、大豪邸。


 頭にある語彙ではどう表せればいいのか、伊都には分からなかった。和洋が入り混じるモダンな建物、夜な夜なパーティーが開かれる館……伊都が抱いた感想は、せいぜいがそんなところであった。


 その豪邸の正面玄関の前には、幾人もの男女が立っている。タキシードであったり、メイド服であったり。何時の時代かと思われそうな光景であったが、もう伊都は何も思わなかった。


 ……考えてみれば、この辺りの住宅全てが豪邸と称してもおかしくないものである。だから、こういう光景が見られることに、そこまで不自然さは無い。


 しかし、車を降りて改めて対面すれば、その豪邸は他よりも一回りも二回りも大きいのが嫌でも分かる。豪邸が立ち並ぶここでも、目の前のやつは別格なのだ……ということを、暗に見せつけられているような気分であった。



(……帰りたい)



 げんなりと、気持ちが萎えて行くのを伊都は自覚する。こんなの、気後れするどころではない。


 贅沢に嫌悪感を抱いているわけではないが、こういう豪奢な場所は少しばかり苦手……訂正、物凄く苦手であった。


 そうして、内心では居心地の悪さを感じていると――がらがら、と、


 担架……いや、ストレッチャーに乗せられた舞世が、メイドたちの手で家の中へと連れて行かれる。連れ添って家の中に入って行く舞香の後ろ姿を見やりながら、伊都は軽く息を吐いた。



「――御足労ありがとうございます。私、当館の執事長を務めさせていただいております、『滝川』と申します」



 途端、タキシードを着た年老いた男……滝川と名乗る男から話しかけられた。見上げれば、優しい眼差しと目が合った。



「御学友の古都葉伊都様、御召し物等のご用意は出来ておりますので、どうぞこちらへ」



 背も高く、若々しい雰囲気を醸し出しているが、還暦を迎えて久しいのが察せられる。どことなくセバスチャンに似た顔立ちのその男は、そっと、手で豪邸の中に入るように促した。



 ……正直、これ以上は嫌だなあ、と思ったのは秘密である。



 元々、伊都は社交的な性格でもないし、活動的な性質でもない。コンビニ初体験を済ませる為に外出し、それを追えた時点で、伊都の気持ちは終わっているのだ。


 成り行きから舞世を助けはしたが、別に見返りが欲しくてやったわけではない。なので、このような歓迎の仕方は伊都にとっては過分というか……有難迷惑でしかなかった。



 だが……そうは思っていても、舞世の事が気にならないといえば、嘘になる。



 とりあえずは、あの札の効力のおかげで2,3日なら大丈夫だ。ソレを目的とした札ではないが、変なことさえしなければ、その間は無事だろう。


 今日の所は私も疲れたし……そう伝えて強引に帰ろうと……しても、多分引き留められるだろうなあ……と、何となく、伊都はそう思う。



 ……でもやっぱり、面倒だ。挨拶を済ませたら、さっさと帰ろう。



 しばし悩んだ後、改めて結論を出した伊都は、言われるがまま滝川の後に続く。


 何気なく振り返れば、ここまで運転したセバスチャンが、こちらに向かって深々と頭を下げているのが見え……ああ、なるほど。



 ……悩んだだけ、無駄か。色々と、伊都は諦めた。



 もう、この際だ……ここよりも落ち着ける場所に案内してくれるなら、それでいい。気が済むまでやってくださいと、そう色々と諦めつつ、改めて豪邸の中に入れば、やっぱり中も相当な豪奢具合であった。



 例えば、まず目に止まったのは天井の照明。



 いわゆる、シャンデリア、というやつなのだろうか。遠目からでも色々と派手なのが分かる。床を見れば真っ赤なカーペットが隙間なく敷かれている……ふむ、土足のまま入るようだ。


 視線を前に向ければ、広い廊下にポツポツと点在する扉。何の部屋へと通じているのかは分からないが、扉と扉の感覚からみて、かなり広い部屋なのはうかがい知れる。比較的手前の方と奥の方に、階段があるのも見えた。


 建物自体は西洋を基本にしているのだろう。


 正直、土足のまま入るのは気が引けるというか……いったい、どこの城に紛れ込んだのだろうか。何だかクラクラする思いで伊都は滝川の後に続き……案内されたのは、客間だという客間に見えない客間であった。


 ……いわゆる、アンティークというやつなのだろう。


 天井から吊るされているシャンデリア、細部まで装飾が施されたテーブル、傍目からでも分かる分厚いソファー。廊下で見たそれらとは、少々造形が異なっている。


 もしかして、入るだけでお金でも取られるのだろうか。床のカーペットは淡いベージュ色になっていたが、まるで花壇の土を踏んでいるかのような柔らかさで……正直、感触が気持ち悪いとすら思った。



「どうぞ、こちらへ。お茶とカタログは後ほどお持ちいたします」



 ぼんやりと室内を見回していると、先を促された。「――あ、はい、お構いなく」言われるがまま、ソファーへと向かう。直後、「……カタログ、とな?」待てよ、と足を止めた。



 カタログ……その単語には、聞き覚えがある。



 だが、このような時に耳にする言葉だっただろうか……いや、しない。訝しんで振り返れば、「――左様でごさいます」恭しく頭を下げていた滝川と、目が合った。



「何分、当館にて保有している衣服の数と種類は膨大でして。お恥ずかしながら、私も全てを把握してはおらず、お手数ながら古都葉様に選んでいただくのが一番かと考えまして……」

「は、はあ、そうですか……そこまでしていただかなくても、私としては濡れた手拭いで十分なのですが」



 謙遜ではなく、本気であった。


 元々、伊都が身に纏っている着物は自作したものなのだ。それに、どうしようもなくなった場合は、『力』を用いて作り出すことも可能だ。


 つまり、その気になれば今すぐ新しい物を用意することが出来るのだ。



「――とんでもない!」



 しかし、そんなことを知る由もない、執事長である滝川は首と手を横に振って拒否した。実に大げさなリアクションだと伊都は思った。



「お嬢様方を助けていただいた御学友様に、そのような持て成しをするのは私どもの、引いては崎守家の恥! どうか、御遠慮なさらず気楽になさってください」



 ……本気だと、伊都は理解した。一切の下心もなく、本気なのが伝わってきた。



「そ、そうですか……まあ、そこまで仰るのならば、私からは何も言いません」



 金持ちには、金持ちなりの何かがあるのだろう。



 そう結論を出した伊都は、ソファーに座ろうと裾を抓み……はた、と動きを止めた。「……どうしましたか?」首を傾げる滝川を他所に、しばしの間、視線をさ迷わせた伊都は諦めて、ソファーへと腰を下ろした。


 途端、あまりにソファーがふかふか過ぎたせいで、腰が埋まり掛けた。いや、ほとんど埋まってしまった。


 ……酷い言い回しだが、泥沼に尻を置いたかのようだと伊都は思った。


 想定していた以上の柔らかさに思わず目を白黒させていると、客間の扉がノックされた。



「――失礼します、お茶とカタログをお持ちいたしました」



 その言葉と共に、お茶と菓子のセットと、カタログが載せられたカートが入ってくる。カートを押しているのは、タキシードを着た男であった。


 見れば、そのタキシードの……ずいぶんと、若い。そのうえ、顔立ちは端正だ。


 鍛えているのか、それとも鍛えていたのかは不明だが、背は高く、体格も立派だ。


 声色も穏やかで、相当の教養を受けているのが、わずかな立ち振る舞いからも窺い知れる。



 男女の機微には疎い伊都の目から見ても、その青年はまさしく美男子であった。



 さぞ、幼い頃より女から構われてきたことだろうと伊都は思った。年齢は、おそらく大学を卒業した辺り……だろうか。


 見た目から年齢を推し量る能力も欠けている伊都は、手際よくお茶の準備を進めてゆく青年を、首を傾げながら見つめる。


 そこには甘酸っぱい熱が……微塵も込められてはいなかった。不思議そうに首を傾げるその視線を、青年に向けていた。



 ……というのも、だ。



 伊都は、青年が部屋に入って来た瞬間から感じ取っていたのだ。猜疑心や警戒心等々。おおよそ、他人に向ければよろしくない類の結果をもたらす感情の数々を。


 微笑みの中に、手際よく用意を進める手捌きの中に、青年が巧妙に隠していることに……伊都は気付いていた。



 伊都が首を傾げた理由が、そこであった。



 敵意を初めとした悪感情を向けられるということ事態は、伊都にとって、取るに足らないことでしかない。


 そんなものは神の御許に仕えていた時での厳しい修行で嫌というほど味わった。今更、たかだか一人から向けられる感情に右往左往する伊都ではない。



(……はて、何か恨みを買うようなことを致しましたでしょうか?)



 問題なのは、どうして初対面の伊都に、わざわざそれを向けるのか、だ。


 舞香の御学友と滝川はそう言ってくれたが、それだってたった一日……それも、数十分ほど一緒にいた程度の付き合いだ。要は、世間話をしたぐらいの仲でしかない。


 クラスはおろか学年だって違うし、そもそも伊都はこれまで本当に必要最低限の人付き合いしかして来なかった身だ。


 舞香に妹がいたことだって、成り行きから分かっただけであり、それすらも望んで知ったことではない。



(……やはり、初対面、ですよね?)



 それなのに、どうして敵意を向けられるのだろうか。「――どうぞ」恭しく眼前に置かれた紅茶とカタログ、それを置いた青年を交互に見やる。



 にっこりと、女ならば大抵の者が笑みを返すであろう青年の微笑みを前にして、伊都はそっと紅茶に口づけ――ん?



 不意に、伊都の目が紅茶から青年へと向けられる。途端、青年は伊都に対して朗らかな笑みを向けた。


 戸惑うことなく自然に取り繕えるのは、視線を向けられることに青年が慣れているからなのだろう。まあ、それはどうでもいい。



 伊都が見ているのは青年――ではなく、その後ろだ。


 閉められた扉をするりとすり抜けて室内に入って来た、常人には見えない存在。


 それは幽霊……とは少しばかり性質が異なる、『生霊』と呼ばれる、霊的存在であった。



 ……生霊とは、生者の身体から切り離された霊魂の一部である。



 幽霊とは違い、強い思念や怨念などによって形作られているため、生霊そのものには意思というものが存在しない。言うなれば、プログラム通りに動くソフトのようなものだ。


 それ故に、単純な除霊でどうこう出来るものではなく、散らしてやるぐらいしか対処法がない。極々稀なことではあるが、悪霊よりも厄介な事を引き起こすこともある存在であった。



(……ずいぶんと多いですね)



 何時まで経っても慣れないせいで緊張しているのもそうだが、暇を潰せるものが室内にないせいだろう。


 自然と、伊都の視線が青年の背後にて漂う、女の姿をした生霊の群れ(という言い方も何だが)へと向けられる。


 その生霊たちの見た目は、どれもが美女と称して良いものであった。


 まあ、この青年自身にその気が有ろうが無かろうが、見た目が見た目だ。目に見える華に惹かれるのは男であれ女であれ、同じこと。


 その華を掴もうと執着し、その想いが生霊となって相手に纏わりつくこと事態はまあ、そう珍しいことではない。


 でもまあ、苦労はしそうだ。今のところは命に係わる程でもなさそうだし、忠告する必要もなさそうだなあ……と、思っていると。



 ――こん、こん、と。



 扉がノックされた。一拍遅れて、開かれる。遅くなりましたという言葉と友に入って来たのは、髭を生やした初老の男と、年齢を感じさせない妙齢の女性であった。


 共に私服ではあるが、何気ない部分にも金を掛けているのだろう。男女共に着ている衣服は卸したてた直後のように綺麗でありながら、馴染んでいる。


 そういった方面には疎く興味の薄い伊都の目からも、二人が鮮やかに着こなしているというのが何となく見て取れた。



 ……おそらく、この二人が舞香の両親なのだろう。



 言われずとも雰囲気からそのことを察した伊都を他所に、恭しく頭を下げる滝川と青年を手で制した二人は、伊都の前に腰を下ろす。と、同時に、青年が二人の分のお茶を用意し始めた……辺りで、二人が自己紹介をした。



 ――二人の紹介の要点をまとめると、だ。



 テーブルを挟んで向かい側に腰を下ろした男女は、伊都が思った通り、舞香たちの両親であった。



 男の名は、崎守源次郎さきもり・げんじろう。舞香とは系統が異なるが、美男だ。若い頃にスポーツをしていたのか体格が良く、がっしりとした体つきなのが衣服越しに想像出来た。


 女の名は、崎守菊花さきもり・きくか。舞香(と、舞世)は彼女の血を色濃く受け継いでいるのだろう。二人が齢を取ればこうなるのだというのが分かる、美しい女性であった。



 そして、そんな二人が伊都に向かって頭を下げたのは、当の伊都が軽く自己紹介をした後。


 この次は、どんな話を続ければいいのか分からず内心にて途方に伊都が暮れていた……そんな時であった。



「――話は聞きました。娘を助けていただき、ありがとうございます。姿が見えなくなった時はもう……本当に、本当にありがとうございます」

「ああ、いえ、別に私は何も……」

「私からも、改めてお礼を言わせてください。此度は娘を助けていただき、本当にありがとうございます」

「はあ、まあ、そう仰っていただけるのなら、嬉しい限りです、はい……」



 涙ながらに……そう、いつの間にか涙を流して何度も頭を下げる母親の菊花と、その妻の肩を抱きながら真摯に頭を下げてお礼を述べる父親の源次郎を前に、伊都は……正直、腰が引けていた。



(……りょ、良心が痛みます)



 表面上、伊都は当たり障りのない笑みを浮かべてはいたが……二人は知る由もないことだろう。ぶっちゃけ、お礼はいいから帰りたいと、本気で、心から、伊都は思っていた。



 いや……まあ、アレだ。二人の気持ちは、分かるのだ。



 何事も無かったとはいえ、こんな夜遅くに子供の所在が分からなくなれば、気が動転してしまうのは分かる。親切にも保護してくれた相手がいて、その相手にお礼したい気持ちも分かる。



 しかし、伊都にとって、彼ら彼女らの反応はあまりに過分過ぎた。



 伊都にとっては、たまたま巡り会って助けただけのこと。お礼の一言があれば、それでよかった。というか、お礼すら別になくても良かったし、結局は伊都がしたかったら、しただけのこと。


 あの時の除霊だって、伊都にとっては取るに足らない些事に過ぎない。使った札だって効果は保障するけれども実際は急造品でしかなく、お礼が欲しくてやったわけでもない。


 だから……こうまで丁重に扱われると、逆に気を使って疲れてしまう。


 ……それに加えて、だ。


 ちらりと、青年へと横目をやる。相も変わらずにこにこと朗らかな笑みを浮かべているが……伊都には分かる。


 何故かは知らないが、舞香たちの両親が涙ながらに頭を下げた辺りから、いきなり敵意が強くなり始めたということに。



 ――もう本当に、何なんだろうか。内心、伊都は目を細めていた。



 眼前には、こちらが恐縮してしまうぐらいの感謝の念。


 片や、ただただ困惑するばかりの敵意の念。


 唯一の癒しが、目頭を押さえて感動に打ち震えている滝川だけという……何だ、この混沌とした空間は。



「……それで、あなた達は私に何を求めているのですか?」

「――えっ?」

「余計な前置きはけっこう。舞世ちゃん……でしたか。あの子なら、そのうち術も切れて動けるようになります。そのうえで、あなた達は私に何をしてほしいのですか?」

「何をって、それは……」

「娘さんを助けてほしい……そうなのでしょう?」



 このままでは、何時まで経っても埒が明かない。


 そう判断した伊都は、さっさと本題に入ることにした。ハッと場の空気が切り替わるのをこの場にいる誰もが感じたが、伊都は臆することなく、どうなのか、と続きを促した。


 ……伊都には、分かっていた。


 驚きに目を瞬かせている眼前の二人は、確かに伊都へ感謝を向けていた。


 しかし、それと同じくらいに。


 伊都に対して……助けを乞うているということに、伊都は気付いていた。


 伊都は神の御許に仕えていた時から、彼ら彼女らのような顔を……正確には、目をした者たちを見て来た。


 言うなればそれは、下心、というやつだ。改めて読むまでもない。


 だから、世相や常識には疎くとも、そういう事に関しては敏感であった。けれども、伊都はその事に関しては何ら嫌悪感を抱いてはいない。


 普通に考えれば気分を害してもおかしくはないところだが、それよりも伊都にとっては、このような遠まわしな催促をされる方が苦手であった。


 故に、伊都は率直に問い質した。



「あなた達が私に感謝の念を抱いているのは分かりますが、このような回りくどいのは嫌いです。出来ることならやりますし、お金が掛かるのであれば必要分を伝えます。私に、何をしてほしいのですか?」



 その伊都の言葉を最後に、場には沈黙が訪れた。俄かに張り詰め始めた空気の中で、伊都を除いた全員が互いに目配せをした。







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