第4話 早速、胃痛ポジション
歩いているとあるテントが見えた。恐らく陣地に行ったみたいだ。そこにはたくさんの国軍の兵士が居た
すると高青年の隣の男が話し出した
「ここが我らの陣地だ」
「広いです」
「当然だ。国軍だからな」
「そう言えば御三方のお名前はなんでしょうか?私は井白 紅月[イシロ アカツキ]です」
高身長の男の人を手で指した
「この方がこの国の東宮 白樺 碧[シラカバ アオイ]様だ。その隣の微笑んでいる奴が藤原 政修[フジワラ マサノブ]だ。そして私が新木 幸脩[サラキ ユキナガ]だ」
「ありがとうございます」
「それにしても凄い腕ですね」
「いえ」
「当然だ。紅月は普通の竜人よりも明らかに濃い血をもつ竜人だ。恐らく元は白竜の血だろう」
「・・・・・・・・・」
(まさか本当に竜がいるのか。確かこの国名は青竜国だから分かるけど。今更になって本当に異世界だな。まさか自分の血に竜の血が流れてるなんて・・・)
「さすが東宮様は一目見れば分かりますね」
新木は眉を顰め怒った顔になった
「それが当然だ。東宮様を小馬鹿にしてたのか?政修」
(なんか幸脩様て殿下のことを少しでも馬鹿にされるとすぐ怒るよな。気を付けよう)
「分かってますよ。『相変わらず凄い能力と血筋ですね』て言ってるんです。分かってくださいよ」
「それにしても東宮様はこの者をどう見てますか?」
「こいつは多分、相当、頭がいい。妙案を産む性格であろう。武道も相当、出来るはずだ」
「羨ましいですねー。私なんか全然、無理ですよ。武術なんか特に」
「お前には圧倒的な頭脳があるであろう?」
「まぁ、それはそうですけど。でも、紅月はなんでもかんでもしちゃいそうで怖いんですよね」
「・・・・・・・・・」
「それでこの者を最終的にどうするのですか?」
「そうだな。右大臣だな」
(しょっぱらから高く見積もられてる・・・。確かに神様か分からないけど優秀な脳は貰ったけど。だからって彼らに勝てる見込みは早々、なさそうだな・・・。やっぱり無理!)
「うわー。明らかに優秀な人材ですねー」
「大臣はこの2人で固めるのですか?」
「あぁ。能力が高くなると見積もれるのはこの3人だけだからな」
「なるほど」
「この者には早速、何をさせますか?」
「策略だ」
(え?早すぎ!ムリ!この大軍はさすがにムリだ!!)
「は?早過ぎませんか?」
政修が幸脩の言葉に頷く
「聞いてなかったのか?紅月は策士だ。策士なら策略させた方が性に合う」
「それはそうですけど・・・」
「それにこいつにはさっさと力を付けてお前らより早く右大臣に就けないといけない。となればここで名作りしないといけないだろう?」
「それはそうですけど」
「ここで大きな功を取って置かないと後々、大変になる。そういう事だ。だから紅月、策略をしろ。これは命令だ」
「なっ・・・」
碧は冷たい目で笑った
(こわ!『はい』と言うしかないだろ。これ)
「・・・はい!」
「だそうだ」
小声で政修が言った
「うわー。無理やりですねー」
しばらくして紅月は碧に解放された
そして今、胃痛薬を飲みながら策略板と睨めっこしている。無茶ぶりをされた紅月は心底可哀想に他の人たちには見えた
「ここは崖だから上から狙われる可能性が高いな。先取りが重要か。挟み撃ちは難しいし隊を分裂させれば力が弱まる。んー・・・、これは悩みどころだな」
「紅月さん。だいぶ進みましたか?」
「いいえ。悩んでます」
「そうですか・・・。頑張ってください」
「ありがとうございます」
(頼むから急かさないでくれ!てか手伝ってくれよ!!)
政修が帰ったあと、紅月はある程度の策略の枠組みが出来ていた
「こうすればいいか」
そして細かい点を決めて行く
ある程度、出来上がった。費料もそれほどかからない作戦だ
必ず戦闘には金がかかる。そこも見積もるのが策士の仕事でもある
「もうこの時刻か。明日提出するしかないな」
ー次の日ー
紅月は早速、碧に策略書を提出した
それを読んだ3人は少し驚き顔だった
「なんか一言で言うと子供遊びじみた事を効率よく利用して経費などを削減してますね」
紅月が作った策略はこうだ
今回、戦うであろう場所は崖と崖の間
まず数ヶ月前から崖を抑える
そして谷間に巨大な落とし穴を作る。作ることで上ばかり気にしている敵は落とし穴に気付かず落ちる
そうすれば敵は慌てる
そして前と後ろの通路を大量の兵士で封鎖する
そこを崖にいる弓兵で射ち殺す
ある程度、敵が削れたら下にいる兵により討伐
もしかしたら、崖を避けて敵が国軍の後ろに回るかもしれないので自軍をだいぶ離れた所に隠すように配備する
崖から登る可能性もあるので蹴落とすために重くて大きい石ころを転がし落とす
落とし穴には少し小細工がある。中は泥水になってる。足が泥の重みで動きず楽なり仕留めやすくなるからだ
この作戦は隠すことが重要な策略だ
もちろんいくつか準備はしていた
その中でもこれは紅月の一番の自信作だ
「確かにこれだと辻褄もあってるし勝算も高い。殿下、この策略にしますか?」
「あぁ」
「分かりました」
着々と紅月が作った策略が実行されて行く
崖を無事に抑えることがてきた時はとても嬉しかった
そしてその時が来た。敵が谷を通ろうとしたその瞬間、罠に引っかかった。敵はどよめく。そして矢が放たれて敵にどんどん刺さっていく。ある程度、片付き義賊の頭である男が連行された
「この作戦を考えたのは誰だ?」
「白井 紅月という若い男が考えた」
「大層な才覚ある作戦だった。まるで子供に遊ばれた気分だ。違う視点を持っているのだな。その男は」
「当然だ。我々が目星を付けるほどのやつだ。普通では困る。存分にその力で働いて貰うつもりだ」
頭は笑った
「その紅月とやらは幸せだな。能力を見つけてもらい己の場所を示してくれる人がいるのだからな」
「示したつもりはない。あいつが勝手になりたいと言って自分の意思でそうしているだけだ」
「そうか・・・。その紅月とやらに『思い残すような人生を過ごすな』と伝えてくれ。今のうちにしか出来ないこともあるからな」
「分かった」
その時、紅月は前後処理の指揮をしていた
「紅月。殿下がお呼びだ」
「分かりました。今すぐ行きます」
紅月は殿下の所へ訪れた
「紅月。よくやった。これで良い反響が出るだろう」
「特に策略や前後処理についても目が付けられるはずだ。という訳でお前には俺の侍従になって貰う」
「えっ?帝にはお聞きしたのですか?」
「もう、済んでる」
「は、はやいです」
「という訳だ。紅月、都に帰ったら侍従として働け。分かったな」
「はい」
「それとお前の策略で捕まった頭がお前について伝言だ。『思い残すような人生を過ごすな』とな。今のうちにしか出来ないこともあるからしとけと言ってた」
「そんなことを・・・・・・」
「恐らく才能ある官吏だった頃、上司に摘まれたことがあったのだろう。あの時、足掻けば良かったと悔やむことがあったのかもしれんな。だから自分のようになるなとな・・・」
「優秀な人材を我らは逃しているのだな」
「そうですね」
「それを守るのが俺の役目か」
「・・・はい」
紅月の作戦は後に都の貴族に知らされた
その功績に役職を与えてはという声が多く集まる結果となった
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ーキャラクター紹介ー
青龍国 皇太子 白樺 碧[アオイ] ~壱~
青龍国の皇太子。岀将入相(文武の両方を極めた意味。紅月も該当する)。その才覚に合うような高身長の美青年。突拍子もない命令が特徴的。碧自身が竜人でとても濃い竜人の血を持つ。次期天皇としてとても有望視されている。かつて白月とは婚約者同士であった
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