第27話

 槇原デスクは櫻子の帰りを、首を長くして待っていた。

「どうだった」

 櫻子の顔を見るなりいった。余程心配していたに違いない。

「ちょっと待って下さい。お願いですからコーヒー一杯飲ませて下さい。咽喉がカラカラなんです」

 バッグを机の上に放り出すと、急いで自販機に向かった。

 紙コップに口をつけながら席に戻った櫻子は、

「わかりましたよ、俊一のいる場所が……」

「ど、どこにいるんだあいつは?」

 槇原は両拳を握り、顔を前に出しながら訊く。

「連絡が取れたわけじゃないんですが、これを見て下さい」

 そういってノートパソコンを開いて槇原に見せた。

「これって……」

「そうです。俊一のスマホのある場所です。これからすると、彼は湘南の茅ヶ崎あたりにいることになりますね」

「どうしてまた、こんなところに」

「わかりません。偶々俊一の部屋を調べていたらこのメモがあったので、ひょっとしてスマホが紛失した時のかもしれないと思って入力したら、ビンゴだったんです」

 その後櫻子は、俊一のアパートに行って大家に部屋の鍵を開けてもらったことなどを槇原デスクにすべて話した。

 しばらく考えていた槇原は、櫻子に出かける用意をいいつける。承知していた櫻子は、いつでも出られると槇原に告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る