……勘違い?
まさか口癖がこんな会話のネタになるとは……
「ビックリしたけど」
会話の最後に私はそう言った。これに関しては曲がりなき本心である。私のその言葉以降、彼は一また黙り込んだ。黙り込ませたのは私の所為であろう。が、原因は私にあれど非は在らず。勝手に変な誤解もとい勘繰りをしてきた彼が悪い。
「ねぇ。名前なんて言うの?」
24分間、互いに名前を知らないまま会話をしていたことにようやく気付いた。基本的に私は最初に名前や、相手が学生なら学年など当たり障りのない話題から話し出す。しかし、スマホを土屋に没収されたイラつきが2日経った今日にまで響いたのだろう。愚痴を聞いてもらいたい欲に憑りつかれていた私にとって、24分前は彼の名前などどうでもよかった。
「……山中です」
変な間があってから彼の名前を聞くことができた。まだ先程のことを引きずっているのか表情は暗いまま。せっかく話題を変えてあげたというのに……
「山中君ね。何組なの?」
「5組ですけど」
なんだろう……凄いムカつく。勝手にそっちが勘違いしていただけなのに。急に対応が冷たくなった彼……じゃなかった。山中に怒りを覚える私。
ん? ちょっと待てよ……勝手に勘違いしているのは私の方なのか? 私の思う山中の勘違いとは、私が山中に気があるということである。しかし、これこそが私の勝手な勘違いなのだろうか? これは私の想像に過ぎず、山中にはそんな気は更々無くただ私と話すのが面倒臭くなった等の理由で冷たい態度を取りだしたのだろうか? 話が飛躍している気もするが……わからない。
私の想像が正しいのか。それとも私の妄想が正しいのか。はたまた山中は別の理由で冷たい態度を取り始めたのか。
「急にどうしたの? ちょっとムカついたんだけど」
さっきのお返しだ! 今度は私が攻めさせてもらう。
「え!?」
そんな反応しても逃がさない。私は精一杯目つきを悪くして山中を睨んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます