第10話

私は財布と携帯のみを持ち、病院へ急いだ。


テレビドラマでみる様々な病室のシーンが頭をよぎった。一体、どんな状況なのか…ただただ、100%じゃなくてもいいから元気な夫に会いたかった。


病院に着いて、名前を告げると直ぐに、ベテランといった雰囲気の看護師さんがやって来て、病室に案内してくれた。


そこで最初に見た夫は、幸いにも、笑っていた。


「びっくりさせて、ごめんね。脳梗塞だって。家系かね。とりあえず、今は点滴で落ち着いているけど、頭は痛いよね。2、3日はまだわからないって。どのみち、ちょっと麻痺みたいな障害は残るみたい。」


夫は、ベッドに横になったまま、顔だけ私に向けて、いつもとあまり変わらない口調で語りかけてきた。


「よかったー!よかったよ!倒れたって聞いて、心配したよ!」


私は、夫と話ができてホッとしたのと、言葉とはうらはらに夫の体調は明らかに悪そうな様子に不安が募り、泣いてしまった。


「いやー、ホント頭が痛くて、こりゃただごとじゃないって、立てなくなって、救急車呼んでもらったんだよ。」


私は、こんなときでも飄々としている夫が愛しくて、さらに泣けてしまった。


主治医から、「2、3日はまだわからない」の部分と「障害は残る」の部分も含め病状の説明を受けた。


まだ実感もわかなかったが、急変もあり得る、ということだったので、その日は着替えなどを取りに帰り、夜は病室に泊まることにした。

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