第5話

そして、生徒は私の夫になった。


ほどなくしてはじまった新婚生活は、予想以上に、幸せだった。


何でもない、極普通の毎日なのだが。


夫は、離婚歴があり、子供はおらず、戸建ての自宅があった。

広めの敷地のその家を建て替えて、生活を始めた。


私は、外での仕事は大幅にセーブし、指名のクラスの講師のみにして、自宅で近隣の子供たち向けの英会話クラスを細々と始めた。


朝起きて、

夫と朝食を取り、

夫を送り出し、

洗濯や掃除を済ませ、

1日の予定を無理なくこなし、

夕飯を作り、

夫の帰宅を待って、

たくさん話をしながら、

夕飯を食べる。


幸せ、とは、不安がない状態、

ともいうけれど、まさにそんな感じだった。


取り立てて、煌びやかなことは一切ない日々だが、今日のこと、明日のこと、ただただ、穏やかに過ぎゆく日々を、2人で過ごす暖かい幸せな日々だった。


私の顔つきも、きっと以前よりも穏やかになったのだろう。

服装などが派手になったわけでもないが、「幸せなんだね、なんか滲み出てるよ。」と言われることが度々あった。

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