第3話

全く予想していなかったといえば嘘になるが


「よかったら、お付き合いしてもらえませんか。」

その食事の後で、生徒からそう伝えられた。


自宅近くの駅まで送ってもらう車の中だった。郊外の町なので、車で送ること自体はそこまで特別なことでもなかったが、今回はちょっとまずかったかもしれないと思った。


やはりこういった話をしっかりするには、車の中は最適だ。変に流したりはできない。


「すみません、一応、私これでも彼氏いるんですよー。見えないですよね、すみません!」

相手に少し申し訳ないという気持ちが先立って、なんとも自虐的な言い方になってしまったが、断る旨を伝えたつもりだった。


しかし、予想外にも生徒はさらに踏み込んできた。

「結婚とか、どうなんですか。相手はそういうの、しっかり考えてくれているの。」


かなり余計なお世話だと思ったし、私よりもひとまわり以上歳上なこともあってか、最後は敬語でもなくなっていて、その勢いに驚きもした。


これは、本腰を入れて断らなければと思い、

「いや、一応そういう話も出ていて…。あんまりそういう話を人にするのも何なんで、とにかく、すみません。」

と、再度相手を見て、諭すように伝えた。

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