[短編(オリ)]放心少女と悪いやつ

 あなたが妖怪ですか。

 そう尋ねられたとき、どう答えるべきか。

 なぜなら、件の、とつくならば、どんな様相であり、悪行であるかを述べるはず。そして、妖怪である、と認識しており、かつ臆する様子もない、ということは何やら心づもりがある、ということに他ならない。

「いいや、わたしは、ただの通りすがりの、幽霊よ」

 幽霊がこのような様相をしているはずもない。妖怪であることを、この場でだけ隠し通せることができれば、今生、こんなやつと会うこともあるまい。

「じゃあ幽霊、妖怪にしてくれる、妖怪を探してるの。あなたは知らない?」

 ああ、そういうやつか。ただの小娘が、どうして世捨てを選んだのかは興味はない。だがどちらを答えたとしても、こやつはとことこ、どこかへと歩きだし、殺されてしまうことだろう。

「あぁ、ここらじゃ、有名なやつだね。そいつから、逃げてきたところでね。多分、あっちから来ると思うよ」

 半分は嘘である。示した先からは、きっと、もうじき、猛禽が飛んでくるだろうよ。そいつらに保護してもらえば、一石二鳥というやつだ。

 ありがとう、と少女は歩きだした。

 さて、やつらからもう一度、逃げるとしよう。話している所を見られたら、現行犯とか言いながら殺されてしまう。

 じゃあね、虚ろできれいなお嬢さん。もし、また会えて、やつらに追われてる最中でなければ、そのお願い、叶えてあげよう。

 そんなことは、二度と、ないだろうけどね。


◆◆◆


 異種族交流憚のいいところというか、こういう互いの目論見をすれ違わせるというか、互いに何かを求めているが、お互いに叶えないみたいなシーンというか、葛藤っておいしい。

 相互依存まではいかないけど、互いに利用して自分の利益を得たいが、相手が与えてくれない。だからこちらも与えることができないというデッドロック状態。

 それが深刻な理由になればなるほどバッドエンド直行になりがちなのですが、もっとふわふわとした理由にしてみるのもいいかもしれませんね。

 ちなみに、視点主を追いかけているのは、もちろん万芽です。追うように指示しているのは彼菜なのか日向なのかは未定ですが、こういうのも描きたいですねぇ。

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