[ネタ]根底からくつがえす

「何を驚いてるんだ?」

 目の前の光景に釘付けになっていると、見ず知らずの人が、声をかけてくれる。

「普通のことだろう?」

 そう伝えられて、ようやく理解する。これがここの常識であるのだと。

 何食わぬ顔で見ている人々の視線の先では、人だったものが横たわっている。間違いなくそれらは人で、間違いようはない。

 物言わぬぐったりとした亡骸は、石になっていた。比喩とか、そういうものではない。動かなくなったそれらは、腐ることなく、石になっていく。

 よくよく見れば、そこらに転がっている石ではないことは分かる。不気味に光を反射していて、肉を飲み込んでいく。

 なんだ、この世界は。どこかに迷い混んだみたいだ……!

 異質な光景はまだ続く。

 いくらか経って、石に完全に覆われたものは、さも当たり前のように砕かれ、どこかへと運ばれた。断面には、もう人の名残はなく、石だった。

 悪い夢だ。何食わぬ顔で採集を行う彼らに、特別な表情はうかがえない。

 ……ここからはなれよう。しばらく、忘れられないだろうが。


 ◆◆◆◆


 理由付けを考えたときに、なんだかんだで邪魔になるのは現実的な設定だったりします。

 文化の違いによる埋葬の仕方は異なれど、死という概念は同じである、といったふうなものですね。


 これをぶっこわして設定を構築すると、存外やりやすくなるときがあります。このエピソードは、今構築中のシール君達の世界観に飛ばされたら、こうなるだろうなぁ、と思いまして。

 実際、亡骸は石になる、ということ自体は新しくもないことなんでしょうけれど、展開を考える上で、前提の根底をひっくり返してみると、意外とうまく作れるかもしれません。

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