[短編(市場)]イーライ・スレイト

 その日、平穏は一瞬で混乱へと変貌した。

 今日もただ、出かけて、なんでもない一日で、もしかすると、ちょっとした事件が起こるかもしれない、程度で寝るつもりだった。

 住居に反響する爆発音。一つや二つではなく、立て続けに。

 私だけじゃなくて、周りの人も呆然と、音の方を見やる。遠くを、世界樹へと昇る煙を見つめて、迫り来る狂乱を、肌で感じていた。

 金属音に続けて、悲鳴が聞こえた。

 とっさに視線をそちらに向けると、二人がいた。一人は武器から血を滴らせていて、もう一人はそいつを見上げて、震えていた。

 一体何が起こってるの? 何が起きたのか、は私でも理解できた。けど、何が起こっているのか、は全く分からなかった。

 どちらを聞き付けたのかは分からなかったけど、近くの騎士の詰所から、ぞろぞろと現れる、見慣れた騎士たち。

「市民の方々は、詰所へ避難をしてください! 早く!」

 加害者をすばやく取り囲んだ騎士たちの一方で、避難を促された私は、続けて鳴る爆発音に、足がすくんでしまっていた。

 加害者は間もなく取り押さえられる。そして、騎士は数人を詰所の警備に回して、どこかへと走り出す。

「早く避難をするぞ!」

 私に気がついた一人が、手を引いてくれる。もつれながらも駆け込んだ先で、私はじっと、身を縮めていた。


 やがて戦禍は去り、私は市場を駆け回った。

 幼馴染みとか、顔馴染みとか。誰でもいいから、いないのかって。親は別の避難場所にいたんだけど、他は、数えくらいしか、見つけることはできなかった。

 王様の報告によれば、渓谷と砂漠からの進行であったらしい。

 勝利宣言が、なされた。

 祝勝会だという、祭も執り行われた。

 でも私は、なかったことにはできないあの戦いに、勝てていない。

 騒がしいその夜、私は玉座の扉を叩いた。


◆◆◆◆


 市場の新キャラ、イーライ・スレイトについて描いてみました。

 制作中のゲームの主人公ポジで、守りたいものを守れるような騎士になるために、門を叩く、みたいな導入(ゲーム本編にはなし)という内容でした。


 そういえば市場の中で人間主人公は、フェリ様を除けば初……? 獣もいないですけど。本編では出なかったクトゥールも登場しますが、さて試験方法はこれでいいのかなぁ、とか思いつつ、最後のデバッグ中です。

 さ、早く終わらせないとな。次のやりたいことが待っている!

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