[短編(オリ)]薄氷を踏む

 パリパリと音が鳴る。

 どこからと探すまでもなく、足元から聞こえている。見れば、剥がれたアスファルトによってできた浅い穴ぼこに、氷が張っているのだ。

 昨日、雨が降ってたからなぁ。

 朝は降っていて、夜も曇っていた気がする。その名残が、冬という季節もあいまって作り出したノイズである。

 体重をかければ、あっさりと陥落する氷菓子下の籠城。一度や二度で済むならば、薄氷も盾となりうるだろうが、幾多の人が通る道で、所詮は薄いだけの氷。いずれは泥にまみれ、蒸発していくのだろう。

 しかし水たちが立てこもっているのは一つや二つではない。ふと視線をめぐらせてみれば、あちこちに水溜まりだったものがあるではないか。

 にやりとほくそえむ意識。だが顔は空くまで外の体を保ちつつ、足を踏み出す。

 パリッ。


◆◆◆◆


薄氷を踏む

 意味は、非常に危険な状況に脚を踏み入れる、だそうです。


 こんな言葉があるということは、薄氷というのは池などにしかできなかったのでしょうか? 検索してみる限りだと、中国からの言葉だそうで、湿潤な地域でないと水溜まりさえできないために、薄氷を見つけることはそうそうなかったりしたのてしょうか。

 でも泉や池でもない限り、薄氷を踏むと楽しいですよね。パリパリと、うすい煎餅を口にして割ったときのような音が聞こえて、感触もあいまって。


 感触といえば、雪もそうですよね。踏み固められた雪は危険ですが、積もりたての雪に足跡をつけたり、ズズズと鳴る音を聞いて、はしゃいだりしましたっけ。

 で、固められていない箇所を探してズズズ、という感触を楽しんで、足が抜けなくなって長靴が取り残されたりとか。

 懐かしいですねぇ。あれだけの豪雪は数年に一度、あるかないかでしたけれど、最近は雪が積もることなんて、全然ありませんし。

 仕方がないので、薄氷で遊ぶことにしましょう。明日はあるのでしょうか?

 怪我には気をつけて、ね。

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