[短編(魔女)]慢性的怠惰

 いつまで寝ているつもりだ。

 そう聞こえていても、部屋には横になっている女性以外に誰もいない。いるのは目付きの悪い大型犬で、じぃとベッドで横になっている彼女を、かれこれ二十分は見つめている。

 やーだー、だるいのー。

 今日の分をよこせ、と前肢をあげてシーツを汚すが、怒ることもなく女性は寝返りを打つ。

 なら帰るぞ。それでもいいのか?

 犬がむすっと、まるで人間のように睨む。威嚇をしているようにも見えるが、喉は鳴っていない。

 だめー。明日にまわしちゃだめ?

 ならば3つだな、と尻尾が揺れる。

 あるいは高級な菓子をよこせ。

 にやりとする犬と、どこからともなく聞こえてくる男性の声に、それでいいよもう、と女性は息を大きく吐いて、布団を被った。


◆◆◆◆


 なるほど、これが無気力か。

 そう実感しましたのでステーキを食べてきました。フードコートの安物ですが、胡椒の効いた歯応えがたまりませんね。おかげでマシになりました。

 それにしてもですね、この1ヶ月、仕事のアレコレがひどくてしんどくてですね。それで今日気づいたんですけど、いつもよりも思考が鈍ってるんですよね。朝から適当に動画を流してしまうくらいには。

 普段だと家事をしながらとかのノイズに使っているだけなのですが、じっと何の情報も整理せず、ただインプットする。


 なるほど。これが。

 通りで何も考えないで、と言われるわけですね。たしかに楽です。楽なのですが、なんかつまらないですね。

 今日はあれして、冷蔵庫には何があって、次はこうして、あの処理は完成として次は、トークも作らないとなぁ、そうなると完成はいつになるのか。

 そうやって意識することで次のタスクが明確になりますし、あるいは次の閃きのための足掛かりを手に入れられる。

 私にとって思考というのは、そういうものらしいです。


 で、怖いのはそれだけの体力が削れたあとですね。

 思考できる体力がないからその場しのぎの娯楽を漁ることしかできないようになるのが。

 結果としてそれがその日暮らしの生活に繋がってしまうことが。

 なるほど、そういうことに恐怖を感じるのか私は。初めての負荷状態になって知ることはできましたが、やはりこれをよしとすることはできませんね。

 余力ある生活、いいですよねぇ。

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