[短編(オリ)]蚊帳の外

「全世界を巻き込んだ大会が、とうとう幕を下ろしました。感動を、ありがとう!」

 というフレーズの後に、多くの拍手喝采のサウンドが流される。本当に収録しているのか、素材なのか。それを判別するにはそれなりの経験が必要になるが、分かったとしてそれが何になるでもない。

 私にスポーツを観戦する趣味はない。その昔、熱心な知人に誘われて行ったことはあるが、なるほど、よく分からない。

 今はどっちか、何をしているか、は分かるのだが、今は何をして、どうするべきなのか、は分からない。なので固唾を呑んでいた知人に尋ねてみると、

「今、これを決めたら四点入って、逆転だ」

 と教えられた。

 つまり、三回のチャンスのうちひとつでも、かっとばせば、彼の応援しているチームの勝利だということか。

 そりゃあ、これだけ静まり返るわけだ。勝負も終盤だと得点ボードが告げているし、ようやく解放される。

 そして二つ目で見事に四点を得て、逆転勝利。歓声に湧く周囲にノッて立ち上がり風船を飛ばしてみたこともあった。

 知人は涙を浮かべるほど喜んでいたが、しかしこちらとしては分からなかった。なんというか、逆転おめでとう、とは言えるが、自分のことのように喜べないのだ。

 感動を、ありがとう。

 曲がりなりにもディスプレイ越しに観戦はしてみたものの、勝負が白熱し、ギリギリの戦いはがりが繰り広げられていることくらいしか分からなかった。ルールや解説を聞いてみても、それがすごいことなのか、ちっとも分からない。

 ひとまず、大きなイベントが、知らないうちに終わったのだな、と出掛けることにした。


◆◆◆◆


 オリンピックが終わりましたね。一昨日のことですけど。

 皆さんはどれだけ視聴されましたか? 私は適当に作業をしているときにちらっとだけ。ろくに聞いていませんけどね。


 さて、私はあまり興味がないのですが、どうしたらスポーツ鑑賞楽しめるようになりますかね? 無理して楽しむ必要はないでしょうが、楽しめるものはあって困るものではありませんから。

 え、実際にプレイする? 私、球技苦手なんですよ。球を使わないものもありますけど、運動下手です。

 あくまでも自分は自分であり、自分の思うすべきこと、を行動に移している、という認識なので、共感覚が鈍っているんですかねぇ。これはある意味危険かもしれない……。

 さて、お盆も目の前。何をしましょうか。

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