[短編(オリ)]ここから先は魔窟です1

 あなたの得意魔法を教えてください。

 おそらく、手元の紙にはそう書かれているのだろう。目の前に座る人は、ペンを片手に回答を待っている。

 補助魔法です。錯乱とか精神に作用するものが得意です。

 すると面接官は渋い顔をする。

 補助魔法って、需要ないんですよねぇ。火炎とか、水氷とか使えないんですか?

 使えない。使えないんです。適正がないんですよ。

 そこから細かな条件を訊かれて、登録自体は問題なく終了する。だが冒険者なんかよりも他の仕事をした方が儲かりますよ、と忠告を受けたのだった。


 そして、とんと声はかからなかった。

 やむを得ず日雇いの仕事で食いつなぎつつ、魔法の鍛練は欠かさない。そこらの野性動物を探し、かけては解除する日々。

 便利だと思うんだけどなぁ、精神系魔法。

 受付に尋ねたところ、単純に敵を真っ向勝負で倒すことがよしとされているのだという。つまり、正面からのぶつかり合いや、魔法で直接的に倒すことこそ、醍醐味。安全に倒すなど邪道なのだ。

 なんだよそれ。これしか使えないのに、姑息だってか? やろうと思えばおまえらにもかけられるんだからな、と心のなかで脅しながら、パーティへの誘いを待ちながら、大きな荷物を下ろした。


 そんなある日、今日も参加要請がなかったことに肩を落としながらいつもの場所を後にする途中、ふと耳に入る言葉が。

 そういえば、最近、金鉱が見つかった先に進んだ奴ら、見てないよな。

 金鉱。そこは現時点で人々に最大の富をもたらすとされている、敵の闊歩する洞窟の、現時点での最奥。まだ奥に続く通路があるという話だったが、あったのか。

 確かに……救援部隊も入れねぇ場所だし、おっ死んじまったか?

 自分が行くなんて、また夢も夢だろう。なんせ一人じゃ追い払うことはできでも、倒せはしない。徐々に強くなっていく敵に催眠が通じるかも分からないし、もういいか、とそこを後にする。

 だが思ったように足を踏み出せなかった。ぐわしと肩を強く掴まれていたのだ。

「……一緒に来ねぇか?」

 よく聞き取れなかった言葉に、立ち止まる。視線を背後にやれば、いかにもな冒険者が。

「あんた、補助魔法使えるんだろう? 手伝って欲しい」

 初めてかかった言葉に、自分は耳を疑う。呆然としていると、契約の条件をべらべらと口にしていて、言われるがままに、しかし願ってもない機会だと快諾した。


◆◆◆◆


 さて問題です。主人公君はなぜスカウトされたんでしょうか?

 ここで、今ありふれている傾向だと捨て駒だとか、マウントをとるための相手を探していたとかいう方向になるんでしょうけれど、さて明日の続きではどうなるのか。


 ちらっと思い付いたものを書き進めただけなので、さてどんなものになるのやら。

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