[日記]1、2、3すぱいだーず

 夕食を終え、七時前。時間に余裕がある。よし、身体を動かそう。

 1、2、と筋を伸ばす。ぐうぅと身体を傾ける。ほぐれていく感覚に身を任せていると、ふとカーテンからせかせかと走ってくる影を見つける。

 遠くから見ると黒く丸く見える身体が、わさわさとせわしなく。きれいなカーブを描きながらフローリングを歩いている。

 私の足へと真っ直ぐ向かってくるので、ふっと脅かしてやると急旋回。しかしぐるりと回って再び近づいてくる。

 その姿を追いながらストレッチを終えて、気がつけばそやつは壁を上り、天井付近でうろうろとしている。てっきり糸を出さないやつなのかと思いきや、足を踏み外したとたんぷらぷらとし始めるので、まぁ、蜘蛛であるには違いないらしい。

 さて、作業前にシャワーを浴びよう。

 そういえば風呂場にも蜘蛛がいたが、逃げれたのだろうか。お湯を出す前にぐるりと見渡すももの、その姿はないようだった。

 ところが扉を閉めると、その裏側でひっそりと身を小さくしていた。浴室の壁をうまく上れないらしいので、バスタオルを目の前にかざしてみる。

 しかし脚を伸ばすこともせず、風呂場の彼か彼女かはいそいそと逃げ出してしまう。かといって手に乗せる勇気はないので、そのままにしておく。

 では作業を開始しよう、とリビングに戻ると、またもや壁を伝う隣人が一人。見上げてみると先の蜘蛛のが天井近くでじっとしていて、その方向へと向かっているようだった。

 よくよく見れば、多分同じ種類。体格差があるので、雌雄なのか、それともなんなのか。

 後からやってきたやつはじっとしている方に数分間、多分、アプローチをしかけていたが、見向きもされずにいた。応援をするつもりはない。いきなりぽとりと落ちないでくれればそれでいい。

 最終的に後から来た方は、また別のどこかへと消えてしまい、じっとしている方は、ずっとそのままだった。

 翌朝、その姿が見えないことを確認したら、顔を洗うために風呂場へ。そして相変わらず脱出できない蜘蛛は、少しだけ壁を上っていた。

 上れるんじゃん。そう思いながらタオルをちらつかせてやると、彼はようやく乗ってくれたのだった。


◆◆◆


 ほんっとに蜘蛛、多いですね。去年はユウレイグモをよく見た気がするのですが、昨日は一日当たりの記録を更新しましたよ。

 ……あ、でもアシダカグモがいるときはちょくちょくその姿を見てたから、それには及ばないか。なので、見た個体数を更新、ですかね。


 もちろん今年も自転車に糸を張り巡らせてますし、その度に糸を取り除いて。ひどいときにはサドルの裏側が真っ白でしたからね。今年は多いです。

 よき隣人でありたいものですけど、数が多すぎるのも心臓に悪いんですよねぇ。不意打ちすごいし。

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