[短編(妖魔)]夏の味3

 今年も夏が、やってきた。

 夏といえば、そう、夏といえば、暑い。それ以外に何があるだろう。トマト? とうもろこし? カボチャに、ナス? あくまでもそれは旬でうまい、というだけで、年がら年中収穫できる今となっては、そう感じることは少ないな。

 ではけたたましいセミ? 虫? 夏休み? 水遊び? どれもこれもしっくりとこない、というよりは、俺がそれで遊んでこなかったことが理由だろう。

 人間だった頃、一緒に遊ぶやつなんていなかったし、食料も全然ないご時世。明日明後日のために山菜を漁りに行く日々だった。

 そして、終戦直前、焼かれたここは、すっかり元の様相を取り戻している。妖怪の住まうここは、夏には青々と茂る様相を見せて、ふもとの村人たちのもとの生活を取り戻す手伝いをした。

 と、水のせせらぎをききながら寛いでいると、彼の目蓋のない眼がぴくりと動いた。

「おはよ」

 そう言ってやると、うむ、と白蛇は鎌首をもたげたかと思うと、くあっと欠伸をする。同時にもたれている鱗もピクピクと動き始めるが、背もたれとしては何の問題もない。

「暑い。暑いぞ、涛」

 表情が一切変わらないゆえに、言葉で訴えかけてくる。これでも手付かずの山の中、都会と比べたら涼しい方なのだが、俺も同意だ。

「んじゃ、帰るか?」

 ならば彼の寝床である地下が一番涼しい。そう考え尋ねてみるが、

「何故だ。我はそれを食いに来たというのに」

 置いていくのか、と彼の青い舌が触れるのは、水にさらしている新鮮な野菜である。こいつの寝床からここまでは、かなりの時間を要する。

「だよなぁ。あと少しだ」

 明下から、持っていけといわれたはいいものの、どこで食えばいいのかと悩んでいたのだが、ここの水が冷えていると遮詠とリムが教えてくれたのだ。

 眠気に揺られる白蛇を半ば強引に連れてきて、俺はこいつをベッドにしている。

 さて、その味はいかほどか。というか、蛇は野菜を食うのか? 妖怪だからいいのか?


◆◆◆◆


 そういえば私って、食事をいまかいまかと待つようなシーンは書けど、食べてるシーンは書かないですね。

 それもそのはず、生野菜は苦手なので、どうしたら美味しそうに見えるか、が分からないんですよね。だから調理過程とかはまだしも、どんな香りが広がって、味覚を刺激するのか、が思い付かないです。


 ……食べてみる? でも苦手なのを引くと、結果として何も書けなくなりそう。妄想でも食べてるところを書くのがいいのかもしれません。

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