[ネタ]対立項
「そもそもなんだけど、この対立ってなんで起こったの?」
ボクがそう口にすると、ウィンウィンと音を鳴らしながら答えてくれるのはアクロだった。
「もとは一つの組織だった。全員が、人間のな」
うるさいんだけど、と散々口にしても治まらないので、今日は止めておく。
「この国は過去に、今は亡き帝国と戦争を始めた。勝ち目はなかったが、貴族が短絡的に、な」
台の上に置いていた地図の上に、別の地図が載せられた。世界地図だと説明する。
「この辺りが帝国領だった場所だ。今はこの国のもので、ケモノ側が主に占領している」
くるりと無機質な指で紙を撫でる。ついでに、俺たちはここだ、と境界線近くを指差す。
「そもそも、俺たちヒューマノイド、おまえたちケモノは、帝国に抗う手段として人間をベースに作られた、倫理観を無視した生体兵器だ」
ていうことは、もとは仲間だったのか。
「身体能力を大幅に強化したヒューマノイド、魔法を操ることを可能にしたケモノ。この二つをもって国は勝利を納めた……まではよかった」
アクロは首を振って、
「だが戦いが終わって残されたのは、人間には戻れなくなった亜人種たちだ。互いが成果を、権利を主張しあい、それらに二分したわけだ。」
嫌なもんだが、と続ける。
「仲間だったんだろ? なんで争う必要があるんだよ」
自然と出てくる疑問は、末端のやつらはそうだ、といつの間にか天井から地図を見下ろすカガチが横槍を入れる。
「いがみ合ったのは、軍隊の頭よ。二分した主張は袂を分かち、部下どもを脅して互いを潰そうとしとる。これが同じ人間とは、思いたくはないのぅ」
しゅるしゅると出し入れされる舌に、ぞわりと毛皮が逆立つ。ほんとこいつは……。
「できれることなら、犠牲なく停戦させることができれば、それに越したことはないけど、上の頭はカネでいっぱいなんだと思うよ、シール」
そこで寝ていたはずのベニリアまで、いつの間にか背後にいる。
おかしな話だ。どうして争い続けるんだろう。同じ人間、だったんだよね?
次の作戦を練ろう、とアクロが世界地図を丸めながら提案する。同意した二人は下にあった拡大地図を覗き込む。
ボクは言いようもない虚しさに、話を聞いていなかった。
◆◆◆◆
対立項を用意すると話を作りやすくなりますが、同時に煩雑さも増します。この煩雑さの正体は、誰がどうして得をするのか、が急に増えてしまうからだと思います。
先述の内容は、ずっと考えているためARPGの土台を形にしてみたものになりますがこれだけでも、勢力ごとに求めている利権はなんなのか、なぜ国が調停しないのか、ケモノとヒューマノイドとは何でありその特徴は何か、等の穴があります。
そしてなぜ、なぜと肉付けしていくうちに訳がわからなくなったりすることも……気を付けていきたいですね。
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