[創作論]人は珍味を求める

 始まりがあった。

 それはある人が膨らませた妄想だった。

 私たちはただの、獣や大地に翻弄されるばかりの生物で、神が七日かけてこの命のはびこる世界を作られた。

 雨は神のもたらす恵であり、洪水は神の怒りの証拠なのだと。それは真かと異邦の者に目を丸くして、これを納めんとそれに従う。

 時は流れ、物語は風化した。しかしこれは面白いものだと、大事なものだと、人々は繰り返し叫ぶのである。

 神は七日をかけて世界を作られ、今も我らを観察している。そして神の裁量で我らは幸せになるのだ。

 神の涙たる雨に感謝するべきだと。しかしその恩恵は大したものではないと知れると、あっという間に人々はこれを忘れる。

 さらに時は過ぎると、人々はこれを編み始めた。

 神は六日かけて世界を作り、今はまだ七日目で、この世界が良いものかどうかを眺めておられるのだと。

 水が溜まってしまうと洪水が起こる。ならば飲んでしまえばいいのではないかと胸を張る怪物を作る。


 果たして、原初たる物語はいずこか?

 あなたの持ち出した一矢が、それでありますよう。


◆◆◆◆


 某映画を見てきました。興奮の鼓動がまだ聞こえますね。


 それはまた明日に回すとして、本日はオリジナルとは? というお話です。

 制作をしているとよく見ますよね。パクりだオリジナルだ、はたまたオマージュだとか。もちろん作品に溢れる世の中、これらを目にしない日はないことでしょう。

 で、これまたよく見ることですが、完全なオリジナルなんて存在しない、ですね。制作者インタビューなんてものでも、たまに色んなものからちょっとずつ真似して、なんてものもあるくらいですから。


 そう考えると、作品って人間の集合知なんですよね。

 初めは私たちの知らない超越的存在がいるかもしれない。それは怒ると雨を降らせて洪水を呼ぶ。ならそれがこの大地を作ったのかもしれない。けど毎日、あれもこれも作れないだろうから、一日ずつ作って、最後の最高傑作が私たちなのかもしれない。

 妄想甚だしいかもしれませんが、これ、全部人間が思い描いたものなんですよ。そのうち権力者が話を取りまとめたものが昨今に伝わっているのかもしれませんね。

 今に残る物語の尾ひれがどこなのか、探してみると以外と面白いかもしれませんね。


 かといってパクりを是とするわけではありませんけれど、あなたの作ったものが、次の集合知の一欠片となる。

 さ、今日は何を作りますか?

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