[短編(市場)]定額制ドリンク

「飲み放題、四名で」

 そう注文を締めくくった青年と、その隣一名、竜二人は立ち上がる。彼らが向かう先は甘いジュースからビターな飲み物までが並んでいるエリアだった。

「あんたはなんで頼まなかったの?」

 残された二名の竜のうち、紅竜、ラクリが頬杖をつきながら口にする。

「飲み過ぎると吐くからな。シェーシャにも言っておかないとな」

 俺も若くないと呟く、もう一人はギル。勢いよく戻ってきたのは私服姿の騎士団長、デイルで、真っ黒な湯気たつものを持ってきた。席にいた二人は目を細め、じっと水面を見やる。

「コーヒーっつう、異国の高級品だってよ。貴族が好んで飲むとか」

 そう説明して勇んで口をつけるも、わずかに眉を潜める。だがそのまま、一度、二度と嚥下する。

「まずかった? 貴族が見栄はって飲んでるんじゃない?」

 いかにもなその顔を眺め、水に手をつけるラクリ。ギルはガキだな、と首を振る。

「それは味じゃなく、香りを楽しむもんだ。苦味を楽しめれば、大したもんだがな」

 三度目はきつかったか、デイルはうるせぇ、とカップを机に。いらないならもらうぞ、と申し出がくるものの、彼はこれを拒否する。

 と青の竜、リエードが戻ってくる。器用な手がないので黄のドリンクの入ったホルダーを首に下げている。

「やっぱ果物だよね、こういうのって」

 席について器用にストローを咥える。

「僕はこっちですね」

 一方、騎士の一人のインスは、深い緑色をしたドロドロとした液体を持ち帰る。なんだそれ、と隣の兄が尋ねれば、野菜を擂り潰したジュースだという。

「おまえ、よく飲めるな……」

 げんなりとするデイルに、美味しいですよ、と彼は躊躇わずに煽り、一気に飲み干してしまう。

 と、彼らのやりとりを静観していたギルが立ち上がる。向かう先は、視線が右往左往としている彼女、シェーシャのもとだった。

 彼の手助けのもと、一杯注文して帰ってきた彼女は、リエードのものと同じホルダーをもらってご機嫌な様子であった。

「料理、残すなよ、おまえら」

 ギルがぽつりと呟くが、若者たちの耳には聞こえていない様子だった。


◆◆◆◆


 ふと思い付いたシチュ、それがドリンクバー。

 彼らならこうするかなー、とかとか考えてましたが、私が最後にドリンクバー注文したの、いつでしたかねぇ。

 最近は水だけで十分なんですよね。ええ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る