[短編(市場)]男の娘って?

※男装女装要素あり


「きょーぅはいっさんのぉーちょーたっつびー」

 今日も者たちの行き交う道を、ずいずいと遠慮がちに押し通りつつ、リエードはほぼ空の鞄を下げ、鼻歌と共に目を輝かせていた。

 ちょうどその日は、よそからの交易品が出回るタイミングで、桃色の枝のような石やら、読めない文字の本、あるいはここらでは見かけることのない遺産が出回っているのだった。

 そんな毛色の違った品々を、右往左往と眺め、用途不明のジャンク品が積まれていることを認めれば、せかせかと人混みを掻き分けてそこへと這いよる。

 彼の体高並みの、扉のついた箱。もちろん中を見てみれば、空っぽだ。似たようなものが山のようにある前でしばし考えた後、彼はそれを背中に結びつけてくれるよう、店主に手間賃と共に頼み込んだ。

 ずっしりとした箱形の遺産に、これ以上は無理だな、と呟いた彼は道の中央に戻り市を、再び歩き始める。

 やがて、交易市の末端にたどり着く。ここまでめぼしいものが見当たらなかったのか、彼の荷物は増えていない。だからか、何度か角を曲がり、来た道を戻ろうとしたときのことである。

「そこの青い竜の、お嬢さん?」

 と本を取り扱っているらしい店から呼び掛けが。だが生憎、そんなものに興味のない彼は無視して流れに乗ろうとする。

「ちょっとちょっと、君みたいな子にいい写真本があるんだって」

 ありふれた客引きの言葉に、彼はゆっくりと店主のもとへと近づき、睨み付ける。だが客引きに成功した店主はいそいそと足元から商品を取り出す。

「あのさ、僕、男なんだけど」

 群衆の中に、青はただ一人だ。まぎれもなく彼に声をかけた店主は、それはすまなかったね、と営業スマイルを欠かさない。

「そうか、男だったか……ならこんなのはどうだい?」

 別の一冊を取り出すと、いかにも男らしい身なりの人物の姿ばかりが納められた本を広げ、リエードに示す。はてなといぶかしみつつ覗き込んでみれば、掲載されている者、全て女性であることは一目瞭然だった。

「そういう趣味の人? 騎士に通報してもいいんだよ?」

 これが地元で売れるんだって、と本を閉じる店主は、もともと彼に示そうとしていた本も広げてやる。先ほどの一冊とは逆で、いかにも女性に見える、男性ばかり。

「喧嘩売ってる? 僕にそーいう趣味はないから。この身体は生まれつきだし」

 それはもう、機嫌を悪くした青年は周囲の者たちに謝りつつも元の道へと戻ってしまう。だが店主は購入したいと申し出た客に、笑顔で応じるのだった。


◆◆◆


 リエ君って男の娘なんだよなぁ……デザイン初期はそういう設定はなかったのですが、市場を進めてるときのこと。詳しくいえば、彼の血縁者はどんなやつらかと考えたとき、彼には男(オス)らしさがないことから、母親の生き写しのような存在である、と設定したんですよね。結果、エルディが最低野郎になりましたがね。


 で、いますよね。男の娘設定。不思議と。こう、一定の年になるまでは女として扱うとか、逆もあるとか。そういった思想から、この性癖に派生したんですかね……?

 あ、私にそんな趣味はないです。設定は設定として受け止めているだけですよ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る