[短編(天地)]朽ちたるこの身に
気配。一定の間隔で刻まれる複数の足音。一対のものではない。三対だ。この近くにある道を辿っているのだろうそれは、
「なぁ、あそこにドラゴンがいるぞ?」
と二対の歩みを止め、二歩、もう一方は進んだ。
「どこに天球があるってんだ。嘘つくなよ」
だがそれも、すぐに止まる。
「こっちだ。こいつに敵意はないよ」
こちらに気づいた二対はだんだんとこちらに近づき、追いかけるように一対も。
「ほれ、見てみろ。死に損ないが必死に天球に引きこもっているじゃないか」
頭上で、小柄なのだろう同族がにやついている様が手に取るように分かる。遅れてきた方も、うわ、と引いている。
「まーた変なもの作り出したね、こいつ」
うるさい。
「時間を巻き戻す天球ならそれなりにあったけど、これはどういうやつ?」
二対の方が、語り始める。やめろ。黙れ。
追い払おうと身体を起こそうとするが、メキメキと地面に引かれて落ちるばかりで、手を伸ばしてもぼろぼろと崩れるばかりで。
「おお、怖い怖い。怨霊じゃないか。身体を腐らせてまで生き永らえる利点がどこにあるってんだか」
何が悪い。死ぬのが怖くて、何が悪い。
意識だけははっきりとしていて、一方で天球の保護対象ではないこの身体は、朽ちて、腐って。もはや痛みすら感じない。
あるのは、こうして、あるはずもない耳で音を聴いて、ない口で否定することだけ。
「……解放は……難しいだろうな」
去れ。貴様らのような無知にここを明け渡す気はない。
「する必要なんてないさ。固執するゾンビに、天球を解放する力なんてない」
まもなく、足音はもと来た道をたどり、遠ざかる。そうだ、どこかへ消えてしまえ。二度と来るな。
死にたくない。死にたくない。
◆◆◆◆
ゾンビっているやないですか? 仮に意識だけははっきりしていて、身体が朽ちていく感覚が残っていたとしたら?
並みの人間だと発狂してそうですよね。ここに、自発的になりましたっていうオプションを付け加えると、それはそれでおいしいものができそうです
その結果、意識だけが残って、身体を動かすこともできず、嫌味を言うこともできず、ひたすらに時間が流れるのに身を任せるしかないドラゴンゾンビができてしまいました。
いやー、天球の設定便利だなー。なんでもありだから。思い付いたものを徒然と書いてみて本にしたいですね?(やれ)
あー、インプットが足りない!
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