[創作論]最初からクライマックス
バイトのまかないの丼飯。誰もいない休憩室で、一つの究極形態である食事を口にする。
まず、器が一つで済む。炊かれた白米。たまにこれだけを買って帰るくらいには、ここのご飯はうまい。火傷をしようが感じられる甘味に、空腹が早く食べろ、いや食わせろと促してくる。
その至高の白米を冷ますのは、つゆだく牛皿。いい塩梅のタレに漬け込んだ肉を解凍して煮込んでいるだけのものだが、肉を、エネルギーを欲するこの体には、世界最高の食い物だと思わせる。
ガツガツとかきこんでいれば、あっという間に夕食は終わってしまう。満たされた腹を軽くさすって、椅子にもたれる。
あぁ、たまらん。サラダなんていらねぇ。牛飯三人前は、やろうと思えば行ける。挑戦してみようかなぁ……。
ふと、空になった丼の向こう側に、ラジオがあった。たしか店の備品で、自由に聞いていいと店長に言われてた。しかし電源を入れてみれば、つながるチャンネルはたった一つ、それも報道番組メインの局なものだから、もはや置物と化している。
体を起こしてスイッチオン。砂嵐がちらつく中、折り目正しそうな声が聞こえてくる。
「次のニュースです。小学生失踪事件についてです」
若い男性だ。
「昨日も、新たに三人。いずれも下校から、帰宅までの時間に行方が分からなくなっています」
ああ、広範囲で起こっているっていう。地域名が読まれ、近所じゃないか、と体を起こすが、ターゲットは小学生であることを思い出してほっとする。
「これで被害者は、十人に上ります。いずれも、なんらかの痕跡や、有力な情報もなく、警察は調査を続けています」
それに、下校時間だろ。今は十一時。俺の帰る夜中には関係のない。次のニュースが読み上げられる前に、俺はラジオを切る。
よし、じゃあ後半戦にいこう。盆を持ち上げ、休憩室を後にする。
◆◆◆◆
この導入、いかがでしたでしょうか? たまに考えている、お菓子の魔女の導入候補です。
先日、市場を読んでいただいて、アドバイスをいただけるという企画にて、読者を引き込む動機・イベントが弱くないか、という指摘をいただきました。
なるほどたしかに。市場の紅青編はキャラ先行でエピソードを書いていましたからね。読者を引き込むイベント・刺激を用意していませんでした。初めから事件があるのはギル、テレア編であり、もしかするとこちらは違った意見を得られたかもしれませんね。
それを考えると、設定・シチュ先行のエピソードである魔王討伐はどうだろう? 二話から戦闘してるからまだいけそうだけどな……。
世界に入って、初めの事件。無双ものならぶん投げればそれで終わり。転生ものなら推してる特徴の暴力で終わり。それで引き込めるのか。私は甚だ疑問では、ありますけどね。
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